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 昭和49年版 犯罪白書 第3編/第1章/第3節/4 

4 少年の刑事裁判

 家庭裁判所が刑事処分相当と認めて検察官に送致した少年事件については,公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がない場合,送致を受けた事件について犯罪の情状などに影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため訴追を相当でないと思料する場合,又は送致後の情状により訴追を相当でないと思料する場合を除いて,検察官は,公訴を提起しなければならない。起訴の方式により,公判請求,略式命令請求又は即決裁判請求の区別がある。このようにして起訴され,昭和48年中に,第一審裁判所において有罪の判決を受けた少年に対する科刑の概況を前年と対比してみると,III-63表のとおりである。48年中に有罪となった少年の総数は4万1,567人で,前年より7,685人の減少となっている。有罪の判決を受けた少年は,ここ数年来減少の傾向を示しているが,これは,45年8月20日から交通反則通告制度が少年にも適用されるようになったことにより道交違反の検察官送致率が減少し,罰金刑に処せられる者が減少したことが最大の原因であると考えられる。

III-63表 少年に対する科刑の概況(第一審有罪人員)(昭和47年・48年)

 また,刑法犯により,懲役・禁錮に処せられた者の執行猶予率をみると,昭和48年は,刑法犯総数の66.7%で,前年より1.2%上昇している。少年の刑法犯総数の執行猶予率は,36年に44.5%と初めて40%台に上昇し,42年には53.5%と遂に50%台に到達し,その後も逐年上昇し,46年には66.4%と60%台を示すに至り,47年のみ0.9%の下降を示したが,48年では,66.7%と再び上昇傾向を示している。これは,実数で最も多い過失傷害の執行猶予率が上昇したほか,傷害,強姦などの執行猶予率が上昇したことにもよるものである。
 なお,刑法犯総数の執行猶予率を年齢層別に比較してみると,起訴時16歳・17歳の者が70.7%,同じく18歳・19歳の者が66.2%である。