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 昭和48年版 犯罪白書 第1編/第4章/第4節/1 

第4節 ドイツ連邦共和国における都市犯罪

1 西ベルリンの犯罪動向

 ドイツ連邦共和国における第1及び第2の大都市である西ベルリン及びハンブルクを取り上げて,ドイツにおける都市犯罪の動向を考察することとする。まず,I-76表は,1964年から1972年までの西ベルリンにおける主要刑法犯(交通犯罪及び国家防衛法違反を除く重罪及び軽罪)の発生件数の推移を示したものである。西ベルリンでは,人口は1964年の219万人から1972年の207万人に若干減少しているが,同表によると,主要刑法犯の総数は同期間に1.77倍に増加している。罪名別の発生件数の推移について,1964年の件数を100とする指数でみると,1972年において,詐欺,背任,横領,堕胎及びその他の風俗犯を除く他のすべての犯罪が増加している。特に,強盗・強盗的恐喝では542と激増しており,その他,放火の269,殺人の233,犯罪庇護・隠匿の232,窃盗の223,危険傷害・重傷害の180などの増加が目立っている。次に,1972年における罪名別の構成をみると,窃盗が総数の68.9%で最も多く,その他,詐欺の4.2%,危険傷害・重傷害の1.9%,横領の1.2%となっており,西ベルリンでも,窃盗,詐欺及び横領の財産犯が,総数のほぼ4分の3を占めている。

I-76表 主要刑法犯(重罪・軽罪)発生件数(西べルリン)(1964年,1965年,1968年,1970年,1972年)

 最近の西ベルリンにおける刑法犯の検挙者の推移をみると,発生件数の増加に応じて,検挙人員も,1964年の5万4,145人から1972年の8万948人に増加しているが,その年齢層別構成については,14歳未満の児童層では,1964年の総数の4.1%から1972年の総数の7.1%に増加しているほか,14歳以上18歳未満の少年層では,5.6%から10.1%に,18歳以上21歳未満の青年層でも,6.9%から9.5%に増加しているが,21歳以上の成人層では,83.4%から73.3%に減少している。また,刑法犯による検挙者の性別構成では,1964年に男性が82.0%,女性が18,0%であったのに対して,1972年には男性が82.9%,女性が17.1%と変化している。このように,最近の西ベルリンでは,刑法犯が相当の割合で増加しているが,特に,青少年層による犯罪の増加が著しい。なお,女性による刑法犯も増加しているが,検挙者総数中に占める女性の割合は若干低下している。
 また,ベルリン市警視総監の犯罪報告書(1972年)により,西ベルリンにおける麻薬犯罪の動向をみると,麻酔剤犯罪(Rauschgiftdelikt麻酔剤の流通に関する法律〔1929年,1934年〕違反をいい,ヘロイン,モルヒネ,コカイン,合成麻薬,LSD,あへん及び大麻事犯を含む。)の発生件数は,1964年には70件にすぎず,1967年までは100件以下にとどまっていたが,1968年以降は急激に増加し,1972年には1,097件となっており,西ベルリンでも,麻薬犯罪が重要な問題となっていることを示している。