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 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第三章/一/4 

4 交通反則通告制度運用の状況

 警察庁交通局の統計によれば,道路交通法に違反して検挙された件数は,昭和三七年に四〇〇万件をこえ,以後,起伏はありながらも,おおむね四〇〇万件から五〇〇万件の間を推移している。このような多数の違反者が,その違反の軽重を問わず,すべて犯罪者として送致され,その多くが刑を科せられて,いわゆる前科者となることは,刑事政策的見地からも,決して好ましい事態ではない。
 このような事態に対処するための方策として考えられたのが,交通反則通告制度である。この制度は,道路交通法違反事件の処理手続の特例として,「道路交通法の一部を改正する法律」(昭和四二年八月法律第一二六号)により設けられたもので,昭和四三年七月一日から施行されている。この制度は,自動車等の運転者がした運転に関する違反行為であって,危険性の高い違反行為等を除いたものを反則行為とし,これを犯した者を,特定の場合を除いて反則者とし,そして反則者(少年を除く。)に対して,警視総監または警察本部長が法令に定める定額の反則金の納付を通告し,その通告を受けた者が,一定の期日までにこれを納付したときは,その違反行為の事件について,公訴が提起されなくなり,納付がなかったときは,刑事手続が進行することを骨子とするものである。また,警視総監または警察本部長の通告に先だって行なわれる警察官の告知を受けた者は,一定の期間内に,反則金に相当する金額を,仮に納付することができるものとし,その者が仮納付した場合には,通告による反則金を納付したのと同様の効果をもたせようとするものである。III-137表は,昭和四四年における交通反則通告制度の運用状況をみたものであるが,これによると,昭和四四年の告知または送致(反則金不納付による送致を除く。)総数四,一三五,一〇九件のうち,少年事件五八一,九七九件を除く三,五五三,一三〇件の成人事件中,反則事件として告知されたのが,二,六八九,四一五件で,その適用率は七五・七%に達している。また,この告知を受けたもののうちで,反則金不納付のため送致されたのは,九七,九八二件で,告知総数の三・六%にすぎない。このように,交通反則通告制度は,順調に運用され,その所期の目的を達しつつあるものと思われる実情にかんがみ,前記昭和四五年の道交法改正は,少年にも交通反則通告制度を適用することとし,反則金を納付したときには,家庭裁判所の審判に付されないことと改められている。

III-137表 交通反則通告制度の運用状況(昭和44年)