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 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第一章/五/1 

1 収容状況

 昭和四四年に,少年院に新たに収容された少年は,四,四〇九人であって,最近五年間の少年院の収容状況をみると,III-77表に示すように,昭和四二年以降,大幅に減少している。昭和四四年における新収容者を少年院の種類別にみると,III-78表に示すとおり,最も多いのは,中等少年院で,全体の六七・六%を占めており,次いで,特別少年院の一六・七%,医療少年院の八・〇%,初等少年院の七・七%の順となっている。前年に比べ,中等少年院の占める割合が増加し,特別少年院のそれが減少している。

III-77表 少年院新収容者数(昭和40〜44年)

III-78表 新収容者の少年院種類別人員(昭和43,44年)

 次に,年末在院者についてみると,III-79表に示すように,昭和四四年末では,中等少年院の在院者が,三,五三七人で最も多く,全体の六五・五%を占めており,実数では昭和四二年以後減少しているが,構成割合では漸増している。

III-79表 少年院在院者の種類別人員(昭和40〜44年,各12月31日現在)

 新収容者の年齢別構成割合をみると,III-80表に示すように,昭和四四年において,最も割合が高い年齢は,一八歳であって,二八・七%を占めており,次いで,一九歳の二七・六%である。以下,一七歳二一・四%,一六歳一二・九%と,低年齢になるにしたがって,その割合が低くなっている。同表により,最近五年間の傾向をみると,一七歳以下の年齢層の占める割合はおおむね減少しているのに対し,一八歳以上の割合は増加の傾向にある。

III-80表 新収容者の年齢別構成比(昭和40〜44年)

 III-81表により,昭和四四年における新収容者の行為別人員をみると,窃盗が最も多く,五二・一%を占め,以下,強姦・わいせつが一〇・八%,虞犯八・九%,恐喝七・二%,傷害六・二%,強盗五・九%の順となっているが,この割合は,前年に比べて大した変動はみられない。

III-81表 新収容者の行為別人員(昭和43,44年)

 III-82表は,最近五年間の新収容者について,家庭裁判所の保護処分歴のある者および少年院に再入した者をとり出し,それぞれの実人員と全新収容者に占める割合を示したものである。最近五年間においては,新収容者のうち,七四・三%ないし八〇・五%の者に保護処分歴があり,また,二〇・四%ないし二一・三%の者が再入者である。

III-82表 新収容者の保護処分歴(昭和40〜44年)

 次に,新収容者中,初めて少年院に収容された者について,処分歴の有無,その内容,回数について調べたのがIII-83表である。これによると,初入院者中,保護観察に付されたことのある者は,四五・五%ないし五〇・八%を占めており,また,審判不開始・不処分を受けた者は三九・七%ないし五〇・二%となっている。これらの処分歴を総括すると,初入院者のうち,すでに家庭裁判所において何らかの処分を受けた者が六七・七%ないし七五・二%に及んでおり,そのうち二回以上の処分を受けた者は三一・七%ないし四〇・七%である。

III-83表 初入院者の保護処分歴(昭和40〜44年)

 次に,III-84表により,新収容者の教育歴をみると,昭和四四年において最も多いものは,中学卒業であって,七二・六%を占めている。次いで,高校中退の一五・四%,中学在学の五・九%,中学中退の三・二%などの順に多い。中学卒業は,どの年次でも最も多いが,その割合が増加しており,高校中退も増勢にある。これに対して,中学在学または中学中退は,減少の傾向にある。

III-84表 新収容者の教育歴別人員(昭和40,43,44年)

 新収容者の非行時の職業をみたのが,III-85表である。これによると,昭和四四年においては,無職者が五五・〇%と最も多く,以下,技能工・生産工程従事者一六・四%,単純労働八・〇%,学生・生徒六・九%,サービス業務従事者六・七%の順となっている。これを前年と比べると,無職者の占める割合がわずかに増加し,有職者の割合が減少した。ただ,有職者の中でも,技能工・生産工程に従事している者の割合は漸増している。

III-85表 新収容者の非行時の職業別人員(昭和40,43,44年)

 次に,III-86表により,昭和四四年の新収容者の知能指数の状況をみると,一般に普通の知能程度であるとされている,知能指数九〇〜一〇九の者が,男子四〇・〇%,女子三一・三%であり,知能指数八九以下の者が男子五五・五%,女子六五・四%と高い割合を占めている。ことに,知能指数六九以下の精神薄弱を疑わせる者の割合は,男子一二・三%,女子二二・四%を占め,知能指数の分布は,低知能の方に著しくかたよっている。

III-86表 新収容者の男女別知能指数(昭和44年)

 また,昭和四四年の新収容者の精神診断の結果は,III-87表に示すとおり,正常と診断された者は,わずかに〇・二%にすぎず,総数の八一・六%は準正常者である。なお,精神薄弱と診断された者が一〇・一%,精神病質者が六・〇%,その他の精神障害者が一・五%も認められる。これを同年における少年鑑別所の鑑別終了者の構成割合(既出III-74表)と比べると,正常と診断される者が著しく少なくて,精神薄弱,精神病質などの割合が高く,資質に問題のある少年がかなり多いことがわかる。

III-87表 新収容者の精神診断状況(昭和44年)

 昭和四四年における出院の状況をみると,退院者の総数は一,五五七人,仮退院者は三,八八六人であり,その平均在院日数は,退院者が三九一日,仮退院者が四四六日となっている。III-88表により,少年院の種類別に,最近五年間の推移をみると,医療少年院では,平均在院日数が,昭和四二年以降,退院,仮退院ともに漸減の傾向があるが,他の少年院では,おおむね漸増している。

III-88表 少年院種類別の退院・仮退院平均在院日数と人員(昭和40〜44年)