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3 仮釈放決定の状況 (一) 概況 地方更生保護委員会が仮釈放の申請を受理し,仮釈放の許否を決定(職権審理による事案についての決定を含むが,昭和四一年,同四三年の各一件のみ。)した状況を,最近五年間についてみると,II-86表のとおりである。仮釈放の申請を受理した人員の総数は,昭和四二年までは三万一千人をこえていたが,同四三年には,約二万八千人に激減し,同四四年には,さらに前年より二,一七三人減少して,二六,二一七人となっている。このような減少は,いうまでもなく,主として矯正施設収容者の減少によるものである。また,仮釈放の許可決定人員も,昭和四二年までは,二万六千人をこえていたが,同四三年には,約二万五千人となり,同四四年には,前年より一,五七〇人減少して,二三,三二六人となった。一方,棄却・不許可率は,昭和四二年以降低下の一途をたどって,同四四年は,八・二%となっている。実数の多い仮出獄および少年院仮退院について,棄却率を比較すると,最近五年間では,仮出獄が九・六%ないし一五・六%,少年院仮退院が〇・四%ないし二・八%であり,少年院仮退院の棄却率が,仮出獄に比し,著しく低くなっている。
II-86表 仮釈放の種類別新受・決定の状況(昭和40〜44年) 以下,仮釈放許否の決定の状況を,仮出獄および婦人補導院からの仮退院についてみることとする。なお,仮出場は,保護観察との結びつきがなく,人員もきわめて少ないので省略し,また,少年院からの仮退院については,第三編の少年犯罪の章にとりあげることとしたい。(二) 仮出獄決定の状況 最近五年間の仮出獄許否の決定の状況は,II-86表のとおりで,仮出獄の申請受理人員は,昭和四三年以降激減し,昭和四四年は,二二,一八七人で,前年より一,一四一人の減少となっている。しかし,棄却・不許可率が,逐年低下して,昭和四四年には九・六%にとどまっているため,同年の仮出獄許可人員は,前年より四二四人減少した一九,四〇八人となっている。
このような仮出獄許否の決定の状況を,矯正施設の長からの申請のあったものについて,受刑者の刑法上の累犯とそうでないもの(非累犯)とに分け,あるいは,刑務所への入所度数別にみたのが,II-87表である。これによると,非累犯より累犯に棄却率が高く,また,入所度数の多くなるにしたがって棄却率が高くなり,昭和四四年の数字についてみると,非累犯の棄却率が四・四%であるのに対し,累犯のそれは一八・五%,また,入所度数一回の者の棄却率が四・一%であるのに対し,二度が九・三%,六度以上になると,三〇・二%に達している。 II-87表 受刑者の累犯・非累犯別,入所度数別仮出獄許否の決定状況(昭和42〜44年) 次に,受刑者の年齢層別に仮出獄許否の決定状況をみたのが,II-88表である。これによると,六〇歳以上の高齢者を別として,年齢の高くなるにしたがって,棄却率も高くなり,昭和四四年では,二〇歳未満の棄却率が二・三%にすぎないのに対し,二〇ないし二四歳が四・四%,二五ないし二九歳が六・六%となり,五〇ないし五九歳は一六・〇%になっている。II-88表 受刑者の年齢層別仮出獄許否の決定状況(昭和42〜44年) このようにして,仮出獄を許可された者について,その執行率(執行すべき刑期に対する執行した期間の割合)をみると,定期刑受刑者の総数についてはII-89表のとおりであり,さらに,昭和四四年につき,累犯と非累犯とに分けて,刑期別にみると,II-90表のとおりである。これによると,定期刑受刑者の総数について,執行率が九〇%以上に達している者が半数をこえ,昭和四四年には,その割合が五一・二%となっており,これに執行率八〇ないし八九%の者の二八・九%を加えると,執行率八〇%以上の者が,全体の八〇・一%を占めている。また,累犯と非累犯とに分けてみると,累犯にあっては,執行率九〇%以上の者が,累犯者総数の七九・八%に及んでいるが,非累犯のそれは,三五・五%にすぎない。非累犯においては,一般に,刑期の長くなるにしたがって,執行率の低くなる傾向が認められる。なお,無期刑仮出獄者の在監期間をみると,II-91表のとおりで,昭和四四年では,その三八・三%が一二年をこえ一四年以内であって,一四年をこえ一六年以内の二三・四%がこれに次いでいる。II-89表 定期刑仮出獄者の刑の執行率別人員(昭和42〜44年) II-90表 定期刑仮出獄者の累犯・非累犯別,刑期別執行率別人員(昭和44年) II-91表 無期刑仮出獄者の在監期間(昭和42〜44年) 次に,仮出獄者の総数について,仮出獄期間をみると,II-92表のとおりである。昭和四四年の仮出獄者では,仮出獄期間三月以内の者は六五・六%であり,三月をこえ六月以内の者が一六・二%,六月をこえ一年以内の者が一一・六%,そして,一年をこえる者が六・五%であって,この割合は,最近数年間にわたってあまり変わっていない。一般的にいって,仮出獄期間,したがって保護観察期間があまりに短いときは,保護観察の効果が十分期待できないことになりがちであるが,仮出獄期間が短い場合でも,本人の在監中に行なわれる環境調査調整の効果が,保護観察を実施することによって確保されることもあり,最近,刑期の短い受刑者,ことに禁錮受刑者に対しても,適正かつ迅速な仮釈放審理が行なわれるよう配慮されている。II-92表 仮出獄者の仮出獄期間別人員(昭和42〜44年) おわりに,仮出獄者と満期釈放者の成行きを比較するため,昭和四〇年から四四年までに出所した仮出獄者と満期釈放者の人員と,そのうち,再犯入所した人員を,入所の年別に示すと,II-93表[1]のとおりである。昭和四四年の出所者の場合は,出所の当年に再犯入所した人員しか成行の追跡はできないが,四〇年の出所者については,出所の当年からかぞえて,第五年目まで追跡がなされており,昭和四〇年以降五年間を平均して,再犯入所率をみると,II-93表[2]のとおりである。II-93表 仮出獄者と満期釈放者の成行き(昭和40〜44年) これによると,満期釈放者は,出所の当年に,出所人員の一二・〇%が再入所するに至っているが,仮出獄者にあっては,その割合が四・五%にとどまっており,また,出所五年目までに,仮出獄者の三〇・八%が再び入所するに至っているが,満期釈放の再入率は,出所人員の半数に近い四九・六%にも及んでいる。このように,仮釈放者が,満期釈放者に比較して,矯正施設に再入所するまでの期間が長く,入所する比率も低い理由の一つとしては,仮出獄が,仮出獄期間中再犯のおそれの比較的少ない者について許可されていることや,保護観察の処遇効果などによるものと考えられる。 (三) 婦人補導院からの仮退院 最近五年間における,婦人補導院からの仮退院申請受理人員および許可人員は,前掲のII-86表のとおりで,その数はきわめて少なく,昭和四四年では,申請受理人員,許可人員は,いずれも前年と同じく二人である。また,出院者のうち仮退院者の占める割合もきわめて低く,出院者一一三人中二人で,わずか一・八%にすぎない。
このように,婦人補導院収容者に対して仮釈放制度がほとんど活用されていないのは,収容期間が六か月であり,また,多くの収容者の心身の状態や家庭環境等に,複雑な事情があり,再犯のおそれも少なくないとみられることなどの事情によるものであろう。 |