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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/一/6 

6 審判

 家庭裁判所が少年事件につき調査を行なう場合に,所在不明などのために審判に付することができないとか,非行がきわめて軽微で審判に付するのが相当でないと認められる場合には審判を開始しない旨の決定をし,また,保護処分に付することができないとか,その必要がないと認められる場合には,不処分の決定をする。この場合にも,単に右のような終局処分だけではなく,旧少年法に認められていたような訓戒などの措置をとることも少なくない。また,調査の結果すでに二〇才をこえていることが判明した場合には,当該事件を検察官に送致する。
 家庭裁判所は,調査の結果,審判を開始するのが相当と認めた場合には,その旨の決定をして,少年法にさだめる方式で直接審理をする。この審判は非公開で,裁判官と裁判所書記官が列席し,家庭裁判所調査官も原則として出席し,当該少年に対し,直接に審訊する。その結果,少年法第一八条または第二〇条にあたる場合には,それぞれ少年法のさだめる決定(都道府県知事または児童相談所長に送致する旨の決定,検察官に送致する旨の決定など)をしなければならない。また,すでに二〇才以上であることが判明した場合には,決定で検察官に事件を送致しなければならない。
 そのような場合以外には,家庭裁判所は,審判を行なった事件について,保護処分を決定しなければならない。家庭裁判所が行なう保護処分は,つぎの三種である。すなわち,
1 保護観察所の保護観察に付すること
2 教護院または養護施設に送致すること
3 少年院に送致すること
 旧少年法が,触法少年および犯罪少年に対する保護処分として,訓戒のほか八種類の処分方法をさだめ,これらの処分を適宜あわせて行なうことができるとしていたのにくらべて,現行の少年法のはきわめて限定されたものということができる。
 昭和三三年中の家庭裁判所における少年保護事件の処理状況をあらわしたIV-37表によると,処分のうちもっとも多いのは不開始の約三一〇,〇〇〇件(処理総数の五九・七パーセント),ついで不処分の八〇,〇〇〇件余(同一六・五パーセント)で,保護処分では,保護観察に付されたのが約二〇,〇〇〇件(同四パーセント),少年院送致が約八,七〇〇件(同一・七パーセント),検察官送致が約四〇,〇〇〇件(同七・六パーセント)とある。

IV-37表 少年保護事件の家庭裁判所処理別人員と率(昭和33年)

 つぎに,道路交通関係事件とその他の事件とを区別するとIV-38表のとおりで,これによってみると,道路交通事件において,不開始は七一・〇パーセント,不処分は一三・四パーセントで,不開始の数がきわめて高い率をしめ,検察官送致は,平均の七・六パーセントをこえる八・七パーセントで,保護処分に付したものは〇・八パーセントにとどまっている。

IV-38表 少年道路交通事件・その他の少年保護事件別の家庭裁判所処理別人員と率(昭和33年)

 つぎに,道路交通事件以外の事件についてみると,不開始は三三・六パーセントであるが,不処分は二三・七パーセントで,両者をあわせると,やはり終局決定の半数以上をしめている。保護処分に付された者は一七・一パーセントで,道路交通事件に比しその比率の高いのは当然である。保護処分のうちでは保護観察がもっとも多く,終局決定の一一パーセントをしめ,ついで少年院送致はその五・六パーセントとなっている。検察官送致は四・九パーセントで,道路交通事件に比し,いちじるしく低率である。このようにみてくると,不開始,不処分を除けば,道路交通以外の事件では保護処分が処分の中心であり,道路交通事件では,検察官送致つまり刑事処分(罰金刑)が中心となっていることがわかる。ただ,道路交通事件で不開始が七一パーセントにも達しているのは,犯罪の性質からみて問題があろう。