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 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第三章/一/3 

3 保護観察の開始と環境の調査および調整

 保護観察は,まず,当該事件の主任官として,保護観察所の保護観察官が指名されて開始する。保護観察に付された者は,みずから保護観察所に出頭しなければならない。主任官は,本人とこれに同伴した保護者とに面接するとともに,家庭裁判所からの調査記録や地方更生保護委員会からの審理票など関係機関から送付された資料を検討して,本人の心身の状況,経歴,環境,今後の生活計画等を把握し,本人が犯罪や非行に陥った原因を診断し,その治療方法を考え,さしあたり必要な指導監督や補導援護の措置を講じたうえ,担当者(ほとんどの場合が保護司)を指名し,速やかに本人を担当者の許におもむかせて,実質的な保護観察が開始されるようにしむけるのである。
 昭和三三年末現在での保護観察対象者を種類別にみると,III-38表のとおり,一号観察(少年に対する保護観察)がもっとも多く総数の約五二パーセントをしめ,これにつづくのが,四号観察(執行猶予者に対する保護観察)の約二三パーセントと,三号観察(仮出獄者に対する保護観察)の約一五パーセントである。

III-38表 保護観察種別の対象者数(昭和33年12月末現在)

 保護観察にさきだって,環境の調査調整が行なわれる。本人が矯正施設に収容されると,その施設の長から保護観察所にあてて,本人の身上調査書が送られてくる。保護観察所長は,環境の調査調整の担当者として保護司を指定し,この身上調査書にもとづき環境の調査調整にあたらせる。担当の保護司は,施設に出むいて本人に面接することもあるが,まず,身上調査書の内容を参考としつつ,その保護者を訪問して,家族の環境や,家族や近隣の人たちが本人にどんな感情をいだいているか,本人の帰住後の生活計画をどうするかなどについて調査するばかりでなく,その相談相手となって,本人を犯罪に陥らせたと考えられる環境上の問題点の改善と調整とにつとめる。そして,その結果を報告書にとりまとめ,保護観察所を通じて,矯正施設と地方更生保護委員会とにおくる。この報告書は,施設での処遇と仮釈放の審査とに重要な資料となる。なお,報告書を提出した後も,保護司は調整をつづけることになっており,環境に変動があれば追報告がされる。