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 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第二章/二/4 

4 補導の状況

(一) 生活指導

 補導の一つに,生活指導がある。これは,(イ)社会に適応する性格を育成し,性道徳を自覚させ,その他婦人としての徳性な養わせること,(ロ)家事,保健その他婦人に必要な知識技能をあたえ,これを活用する習慣を養わせること,(ヘ)職業に関する知識をあたえ,勤労に親しませ,正しい生活態度を身につけること,(ニ)視聴覚教育,レクリエーションなどを通じて婦人としての情操を豊かにすること,(ホ)その他社会生活に必要な素養をあたえることなどを目的とする。方法としては,個別的には相談や助言によって行ない,集団的には,講話,スライド,集団心理療法などにより,また,外部の学識経験者による面接指導もある。

(二) 職業補導

 在院者は,そのほとんどが正常な職業経験をもたないので,更生をはかるには,婦人として自活するにたりる職業の知識と技能をあたえることが必要であるが,在院期間が六ヵ月という短期間であることと,知能程度が相当に低いところから,その趣旨にそうような職業補導の実施は,きわめて困難なのが実情である。したがって,現実の目標としては,生活指導と関連させて,正常な職業生活に馴れさせ,勤労意欲を喚起することに重きがおかれている。昭和三四年末での職業補導の種目は,和裁,洋裁,家事,手芸および園芸などである。
 これらの職業補導をうけた者には,一日最高二七円の賞与金が支給されるが,これでも,受刑者や少年院在院者にくらべれば高額である。

(三) 医療

 補導の一つに医療がある。昭和三四年度の入退院者一五九人について法務省矯正局の調査したところによると,入院時になんらかの傷病をもった者は,七四・二パーセントにあたる一一八人であり,傷病のない者は,二五・八パーセントにあたる四一人であるが,この帯患者一一八人のうち出院までにどの程度の治療がすすめられたかをみると,全治して出院したのが九五人(八〇・四パーセント),全治にいたらないで出院したのが二三人(一九・五パーセント)で,比較的に良い成績をあげているといえよう。入院時の傷病では,性病がもっとも多く,トラホーム,産婦人科疾患,結核,麻薬中毒などこれについでいる。