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 昭和35年版 犯罪白書 第一編/第二章/五/3 

3 外国人とくに朝鮮人の犯罪率

 在留人員の多いところからか,外国人犯罪の大部分は,朝鮮人によるものである。朝鮮人の犯罪率の戦前からの推移を人口に対する新受刑者数の率で日本人とくらべてみると,昭和二年の刑法犯では日本人の一〇倍であったが,その後しだいに減少して,昭和一一年には四倍にまで下がり,その結果,昭和二-一一年の平均では七倍であった。戦時中は,さらに減少して,日本人の二倍となったこともあったが,戦後には,また,一〇倍前後にまで増加し,一四倍になった年(昭和二五年)もあった。昭和三三年にも,刑法犯について一〇倍の率になっているのであって,朝鮮人と他の外国人別に有責人口に対する率を算出すると,I-64表のとおりである。罪名別では,朝鮮人の犯罪率は,日本人のに対し,傷害致死一五倍,その他の傷害一二倍,恐喝一〇倍など,暴力犯罪に率が高い。そして,賍物関係では,四五倍という高率にのぼっている。特別法犯が七〇倍という高率を示すもっとも大きな原因は,出入国管理令違反が多いためであろうが,麻薬中覚せい剤事犯も三〇倍または二〇倍という高率である。もっとも,この統計表での犯罪率は,登録人口中の有責人口で計算した数を基礎とし,そのほかに未登録者を度外視しているので,実際よりも高い率がでていることを留意する必要があろう。

I-64表 主要罪名別・国籍別新受刑者数とその率(昭和33年)

 その他の外国人にはアメリカ軍人,軍属などが多数いて,登録人口との差が大きいため,犯罪率は実際よりもはるかに高くなり,日本人のとの正確な比較は困難である。