裁判員裁判(裁判員の参加する刑事裁判)の対象事件は、死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件及び法定合議事件(死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪(強盗等を除く。))であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件である。ただし、被告人の言動等により、裁判員やその親族等に危害が加えられるなどのおそれがあって、そのために裁判員等が畏怖し裁判員の職務の遂行ができないなどと認められる場合には、裁判所の決定によって対象事件から除外される(令和5年において、同決定がなされた終局人員は11人であった(最高裁判所事務総局の資料による。)。)。また、審判に著しく長期間を要する事件等は裁判所の決定によって対象事件から除外される(同年にはそのような決定はなかった(最高裁判所事務総局の資料による。)。)。なお、対象事件に該当しない事件であっても、対象事件と併合された事件は、裁判員裁判により審理される。
裁判員裁判対象事件の第一審における新規受理・終局処理(移送等を含む。以下この節において同じ。)人員の推移(最近5年間)を罪名別に見ると、2-3-3-5表のとおりである。令和5年の新規受理人員の総数は、前年から15.9%増加して972人であったところ、覚醒剤取締法違反の新規受理人員が前年から105.0%増加して123人となり、特に前年からの増加幅が大きかったほか、強盗致傷の新規受理人員も前年から94.7%増加して259人となり、罪名別で最も多かった。
令和5年に第一審で判決等に至った裁判員裁判対象事件(裁判員裁判の対象事件及びこれと併合され、裁判員裁判により審理された事件。少年法55条による家裁移送決定があったものを含み、裁判員が参加する合議体で審理が行われずに公訴棄却判決があったもの及び裁判員法3条1項の除外決定があったものは含まない。以下この節において同じ。)における審理期間(新規受理から終局処理までの期間をいう。以下この節において同じ。)の平均は13.2月(前年比0.6月減)であり、6月以内のものが12.0%(同1.3pt上昇)を占め、そのうち3月以内のものはなかったのに対し、1年を超えるものが40.0%(同3.5pt低下)を占めた。また、開廷回数の平均は5.3回であり、3回以下が14.4%、5回以下が69.1%を占めた(最高裁判所事務総局の資料による。)。
2-3-3-6表は、令和5年に第一審で判決に至った裁判員裁判対象事件について、無罪の人員及び有罪人員の科刑状況等を罪名別に見たものである。同年の裁判員裁判対象事件についての第一審における判決人員の総数は、807人(前年比69人増)であった。