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令和6年版 犯罪白書 はしがき

はしがき

令和5年における刑法犯の認知件数は、前年に引き続き増加し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前である元年の水準に迫るものとなった。特別法犯を含む個別の犯罪について見ると、児童虐待に係る事件、配偶者からの暴力事案等、サイバー犯罪、特殊詐欺等については、依然として検挙件数が増加傾向又は高止まり状態にあるほか、大麻取締法違反については、20歳代の検挙人員が前年より大幅に増加している。加えて、少年の刑法犯の検挙人員も2年連続で増加していることなども踏まえると、我が国の犯罪情勢は予断を許さない状況にある。

他方、再犯の状況を見ると、出所受刑者の2年以内再入率は、全体としては低下傾向にあるが、男女別に見ると、男性が低下傾向にあるのに対し、女性は、男性よりも一貫して低いものの、おおむね横ばいの状況が続いている。入所受刑者の再入者率の推移を見ても、女性は、男性よりも一貫して低いものの、近年高止まりの状態にあり、立ち直りの難しさがうかがえる。

令和5年3月に閣議決定された第二次再犯防止推進計画においては、第一次の同計画に引き続き、犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等が重点課題として位置付けられている。女性受刑者等に関しては、虐待等の被害体験や性被害による心的外傷、依存症・摂食障害等の精神的な問題を抱えている場合が多いことが指摘されており、具体的施策として、女性受刑者等の困難に応じた指導・支援が盛り込まれている。再入率等の状況に鑑みれば、効果的な処遇の推進のため、その抱えている困難の実態を把握し、傾向や特徴について分析することの必要性は高い。

法務総合研究所では、女性犯罪者に関し、これまでも平成4年版犯罪白書特集「女子と犯罪」、平成25年版犯罪白書特集「女子の犯罪・非行」等において、公的統計に基づいた動向分析等を行ってきたところであるが、それから約10年が経過しており、実態把握のためには新たな調査・分析を行うことが重要と考え、本白書では「女性犯罪者の実態と処遇」と題して特集を組むこととし(第7編)、近年の社会状況の変化、女性による犯罪の動向、女性犯罪者に対する処遇・支援の現状等を概観するとともに、女性受刑者等を対象として実施した特別調査の結果から、女性犯罪者の再犯防止及び円滑な社会復帰を図る上で留意すべき点について検討を行った。

令和5年を中心とする最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を扱った本白書のルーティーン部分が、犯罪情勢の定点観測を行うための素材として、効果的な刑事政策の立案の基盤となるとともに、特集部分が、女性犯罪者の特性に応じた再犯防止策や円滑な社会復帰のための方策を検討する上での基礎資料として、広く活用されれば幸いである。

終わりに、本白書の作成に当たり、最高裁判所事務総局、内閣府、警察庁、総務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省その他の関係各機関から多大な御協力を頂いたことに対し、改めて謝意を表する次第である。


令和6年12月


法務総合研究所長 森 本 加 奈