裁判所の通院決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)又は退院許可決定を受けた者は、原則として3年間、指定通院医療機関(厚生労働大臣が指定する。令和5年4月1日現在、全国に4,069の機関がある(厚生労働省社会・援護局の資料による。)。)による、入院によらない医療を受けるとともに、その期間中、継続的な医療を確保することを目的として、保護観察所による精神保健観察に付される。
精神保健観察の実施に当たって、保護観察所は、指定通院医療機関や都道府県、市町村等の精神保健福祉関係機関の関係者と協議の上、対象者ごとに処遇の実施計画を定める。各関係機関は、これに基づき、相互に連携を図りながら地域社会における処遇を実施する。処遇の経過に応じて、保護観察所は、処遇に携わる関係機関の参加を得て「ケア会議」を開催し、処遇の実施状況等の情報を共有して処遇方針の統一を図るとともに、処遇の実施計画についても必要な見直しを行う。
令和4年における精神保健観察の開始件数(移送によるものを除く。)は227件(このうち退院許可決定によるものは203件)、終結件数(移送によるものを除く。)は199件(このうち通院期間の満了によるものは131件)、同年末現在の精神保健観察の係属件数は584件であった(保護統計年報による。)。入院によらない医療を受けている者の医療の終了(ただし、通院期間の満了を除く。)や指定入院医療機関への(再)入院についても、裁判所が審判により決定する。同年における医療終了決定は53件、(再)入院決定は10件であった(司法統計年報による。)。
なお、保護観察所に社会復帰調整官が置かれ、生活環境の調査及び調整、精神保健観察の実施、関係機関相互の連携確保等の事務に従事している。