配偶者暴力防止法は,被害者からの申立てを受けて裁判所が加害者に対して発した,被害者の身辺へのつきまといをすることなどを禁止する保護命令に違反する行為(保護命令違反行為)等に対して罰則を設けている。令和元年6月の改正では,被害者保護のために相互に連携・協力すべき関係機関として児童相談所が明記された(令和元年法律第46号。2年4月施行)。
配偶者からの暴力事案等の検挙件数の推移(平成22年以降)を見ると,4-6-2-1図のとおりである。配偶者暴力防止法に係る保護命令違反の検挙件数は,平成27年以降減少傾向にあったが,令和2年は増加し,76件(前年比5件増)であった。その一方で,他法令による検挙件数の総数は,平成23年以降増加し続けていたが,令和2年は減少し,8,702件(同388件減)であったものの,平成22年の約3.7倍であった。特に,暴行及び暴力行為等処罰法違反の検挙件数が大きく増加している。また,令和2年における強制性交等の検挙件数は,10件(同4件増)であった(警察庁生活安全局の資料による。)。
なお,令和2年における配偶者からの暴力事案等に関する相談等件数(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた被害者の相談等を受理した件数をいう。)は,8万2,643件(前年比0.5%増)であり,被害者の性別の内訳を見ると,男性が1万9,478件(23.6%),女性が6万3,165件(76.4%)であった。被害者と加害者の関係別に見ると,婚姻関係が6万1,808件(74.8%)と最も多く,次いで,生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係1万4,528件(17.6%),内縁関係(婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある場合をいう。)6,307件(7.6%)の順であった(いずれも,元々その関係にあったものを含む。警察庁生活安全局の資料による。)。