被収容者には,食事及び飲料(湯茶等)が支給される。平成30年度の成人の受刑者一人当たりの一日の食費(予算額)は533.17円(主食費101.50円,副食費431.67円)である。高齢者,妊産婦,体力の消耗が激しい作業に従事している者や,宗教上の理由等から通常の食事を摂取できない者等に対しては,食事の内容や支給量について配慮している。また,被収容者には,日常生活に必要な衣類,寝具,日用品等も貸与又は支給されるが,日用品等について自弁のものを使用することも認めている。なお,同年度の刑事施設の被収容者一人一日当たりの収容に直接に必要な費用(予算額)は,1,837円である(法務省矯正局の資料による。)。
刑事施設には,医師その他の医療専門職員が配置されて医療及び衛生関係業務に従事している。さらに,専門的に医療を行う刑事施設として,医療専門施設4庁(東日本成人矯正医療センター並びに岡崎,大阪及び北九州の医療刑務所)を設置しているほか,医療重点施設9庁(札幌,宮城,府中,名古屋,大阪,広島,高松及び福岡の各刑務所並びに東京拘置所)を指定し,これら13庁には,医療機器や医療専門職員を集中的に配置している。
矯正医官の人員は,矯正施設における医療の特殊性・困難性や,国家公務員であるがゆえの勤務条件等の影響を受け,欠員が解消されない状況が続いている。そうした中,法務省は,矯正医官の確保策として,大学医学部等を対象とした矯正医療の積極的広報,各種医療関係団体への医師派遣等の協力要請等の取組を実施している。また,平成27年からは,矯正医官の兼業の特例等に関する法律(平成27年法律第62号。28年3月末までの法律名は「矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律」)に基づき,兼業の許可に関する国家公務員法の特例等を設ける措置が講じられた。このような取組・措置等により,矯正医官の人員は,29年度から減少傾向に歯止めがかかって増加に転じ,30年4月1日現在で294人と,前年(275人)より19人増加しているものの,依然として,定員の約9割にとどまっている(法務省矯正局の資料による。)。