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平成29年版 犯罪白書 第7編/第3章/第1節/コラム13

コラム13 更生保護施設及びその所在地域における薬物依存回復支援プログラム

北海道旭川市にある更生保護施設旭川清和荘(以下「清和荘」という。)は,薬物依存からの回復に重点を置いた処遇を実施する更生保護施設(薬物処遇重点実施更生保護施設)として法務大臣の指定を受け,平成28年5月から,薬物事犯で入寮した者を支援対象とした回復プログラムを施設内で実施している。

同プログラムは,定期的に,寮生全員で行う朝の清掃後,対象者が会議室に集まって行われ,薬物専門職員を中心とする施設職員2,3人が司会進行を務める。認知行動療法に基づくSMARPP-16という教材を用い,1回につき約1時間のセッションで1課程ずつを取り上げ,16回で一巡したら,また初めから繰り返して継続する。SMARPPは,Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program(せりがや覚せい剤依存症再発防止プログラム)の略称である。

ところで,旭川市内には,アルコール・薬物依存症から回復したい人が,費用負担なく通所で利用できる地域の回復支援プログラム「道北リカバリーセミナーPolar Bears」(以下「PB」という。)がある。平成26年11月から毎月2回,定期開催され,教材には現在,24回で一巡するSMARPP-24を使っている。PB利用者は,保護観察対象者,元保護観察対象者,そして刑事司法に縁がない人が混在し,等しく依存症からの回復当事者として自分の意志で参加している。

旭川市を含む北海道北部地域には,通所利用できる薬物依存症回復支援の社会資源がなかったことから,旭川保護観察所が呼び掛けてPBが誕生した。地域関係者の支援を得ながら,同保護観察所が運営を主導してきたが,治療的効果の向上と地域への定着強化を目指して運営の在り方を見直し,平成29年2月に設立した一般社団法人に運営主体を移した。新体制の下,地域の医療・福祉等従事者と更生保護関係者がスタッフとして力を合わせ,毎回のセッションに取り組んでいる。

PBの会場となっている旭川更生保護サポートセンターと清和荘は距離が近く,清和荘からPBに通う寮生もいる。清和荘の薬物専門職員 山ア悟史 氏は,清和荘が施設の方針として薬物処遇の強化に取り組む中,平成28年2月からPBに通う寮生に同行し,自身もPBに参加するようになった。以前から薬物事犯の寮生に毎月集団処遇を実施してきたことに加え, SMARPPを使うPBに接して学んだ経験が,薬物専門職員となってから大変役に立っているという。

清和荘では,寮生の多くが,退所後は本州各地や札幌市近辺に移り住む。清和荘で回復プログラムを受け,PBにも通った人が,今後も支援につながれるよう,希望に応じ,転居先の社会資源について情報提供をしている。また,引き続き旭川に住む人にはPBの利用を勧めている。退所とともにPBに通所しなくなる人もいる一方で,退所し保護観察も終わって数か月経ってから,PBに顔を出し,仲間の参加者に拍手と歓声で迎えられ,それから再び続けて通っている人もいる。

更生保護施設内での回復プログラムを,その後の地域での回復支援にどうつなげていくか。清和荘でも,寮生の全員が退所後にPBを利用できるわけではないが,この事例のように,退所後に回復のための社会資源につながる人が増えていくことが期待される。

更生保護施設旭川清和荘での薬物回復支援プログラム【写真提供:更生保護施設旭川清和荘】
更生保護施設旭川清和荘での薬物回復支援プログラム
【写真提供:更生保護施設旭川清和荘】