この章では,米国,英国(イングランド,ウェールズ,北アイルランド及びスコットランドをいう。以下この章において同じ。),フランス及びドイツの4か国の犯罪動向を紹介し,我が国と対比する。
統計資料については,これまでの犯罪白書では各国の公的資料を用いてきたが,一部の国の資料において,統計の集計項目等が変更されたことなどから,連続性を保ちつつ,各指標を比較することが困難になったため,本白書では,国際連合(国連)薬物犯罪事務所(注)(UNODC:United Nations Office on Drugs and Crime)が実施した,犯罪情勢等に関する調査(UN-CTS:United Nations Survey of Crime Trends and the Operations of Criminal Justice Systems)に基づくUNODC統計(UNODC Statistics)を資料とする。
同調査においては,各犯罪を定義した上で,共通の調査票を用いて各国に照会し,各国の関係当局等による回答を集計して,各国の犯罪情勢等に関する指標として公表する手法が採られている。UN-CTSで用いられている各犯罪の定義と前記各国における各犯罪の定義とが必ずしも一致しないこと,各国における統計の取り方も必ずしも同一ではないこと,限られた犯罪の発生件数等のみで各国の犯罪情勢一般を正確に理解することはできないことなど,留意すべき点はあるものの,これらの国の近年の犯罪指標の推移を示すことは,国際的な犯罪情勢を考察する上で参考となるものと考えられる。
本白書では,UNODC統計に基づき,犯罪情勢を検討する上で重要な犯罪類型である殺人,強盗,窃盗及び強姦について,前記4か国と我が国の犯罪指標の推移(最新数値である平成25年(2013年)までの5年間)を掲載する。
注 国連薬物犯罪事務所(UNODC)は,国連事務局の中で,不正薬物,犯罪及び国際テロリズムの各分野に関する業務を担っており,国連経済社会理事会の機能委員会である麻薬委員会及び犯罪防止刑事司法委員会等の事務局を務めるとともに,不正薬物,犯罪等に関する調査・分析,加盟国に対する関係条約の締結・実施及び国内法整備の支援,これらの対策に関する技術協力の提供等を行っている。