性犯罪者の再犯状況や再犯と関連する要因を見るため,全対象者のうち,調査対象事件の裁判確定から5年間に,再び有罪の裁判を受けて裁判が確定した者を対象に,当該再犯の内容や再犯に及んだ動機等について,刑事確定記録等に基づき再犯調査を行った。ここで,「再犯」とは,罰金以上の刑で再び有罪の裁判を受けて裁判が確定した事件をいい,その事件の犯行日が調査対象事件の裁判確定日以前の事件,調査対象事件により実刑に処せられた者がその服役中に犯した事件並びに自動車運転過失致死傷等及び交通法令違反による事件を除く。この節では,再犯のうち,罪名を問わない全ての再犯を「全再犯」,性犯罪を含む再犯を「性犯罪再犯」という。さらに,再犯の罪名に強姦又は強制わいせつを含むものを「性犯罪再犯(刑法犯)」,性犯罪再犯が条例違反のみによるものを「性犯罪再犯(条例違反)」という。
なお,調査対象事件により執行猶予の言渡しを受けた者については,再犯が可能であった期間(以下この節において「再犯可能期間」という。)を5年間確保できる一方,調査対象事件により実刑に処せられた者の中には,調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点においても未だ服役している者もいる。さらに,実刑に処せられて,服役し,裁判確定から5年が経過する前に刑事施設から出所した者についても,出所日が異なることから,再犯可能期間には長短がある。したがって,この節において,全体的な再犯の傾向等を把握するために,裁判内容別や出所受刑者(仮釈放又は満期釈放により刑事施設を出所した者に限る。以下この節において同じ。)の出所事由別(仮釈放又は満期釈放の別をいう。以下この節において同じ。)に再犯の状況を見ることがあるが,その場合には,比較する対象者の再犯可能期間が異なっていることに留意する必要がある。
再犯調査の結果,全対象者1,791人のうち,調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点において服役中の者及び服役中に死亡した者を除いた1,526人についての再犯の有無別人員を見ると,全再犯ありの者は311人(20.4%)であった。このうち,性犯罪再犯ありの者は207人(13.6%)であり,全再犯ありの者のうちの66.6%を占めていた。
以下,この節(ただし,4項を除く。)においては,性犯罪者類型対象者のうち,調査対象事件の裁判確定から5年が経過した時点において服役中の者及び服役中に死亡した者を除いた1,484人(以下この節において「再犯調査対象者」という。)を分析の対象とする。