前の項目 次の項目       目次 図表目次 年版選択

平成27年版 犯罪白書 第6編/第4章/第3節/3

3 性犯罪者類型別の特徴
(1)基本的属性

性犯罪者類型別に,犯行時の基本的属性を見ると,6-4-3-3図のとおりである。

6-4-3-3図 性犯罪者類型対象者 犯行時の基本的属性(性犯罪者類型別)
6-4-3-3図 性犯罪者類型対象者 犯行時の基本的属性(性犯罪者類型別)
Excel形式のファイルはこちら

性犯罪者類型別の基本的属性について,性犯罪者類型対象者全体の傾向(CD-ROM参照)と比較したところ,各類型の特徴は次のとおりである。

ア 単独強姦型

単独強姦型は,犯行時の年齢が29歳以下の者の割合が47.3%と高く,そのうち,19歳以下の者は11人(2.8%)であった。一方,65歳以上の者は7人(1.8%)であった。平均年齢は32.9歳であり,集団強姦型に次いで若かった。教育程度は中学卒業(義務教育未了,高校在学及び高校中退を含む。以下この節において同じ。)の割合が44.5%と高かった。

イ 集団強姦型

集団強姦型は,犯行時の年齢が29歳以下の者の割合が79.5%と高く,そのうち,19歳以下の者は15人(18.1%)であった。一方,40歳以上の者は40〜49歳の1人であった。平均年齢は25.0歳と性犯罪者類型別では最も若かった。教育程度は中学卒業の割合が68.8%と高かった。また,婚姻状況は未婚の者の割合が61.4%と高かったが,居住状況では単身居住の割合は14.3%と低く,配偶者以外の親族と同居の割合が53.2%と高かった。

ウ 強制わいせつ型

強制わいせつ型は,犯行時の年齢が29歳以下,30〜39歳,40歳以上の区分でそれぞれ約3割であった。平均年齢は36.8歳で,19歳以下の者は6人(0.9%),65歳以上の者は27人(3.9%)であった。婚姻状況は既婚(内縁関係によるものを含み,離死別を含まない。以下この章において同じ。)の者の割合が40.3%と高かった。就労状況は無職の割合が16.9%と低く,有職の割合が80.6%と高かった。

エ 小児わいせつ型

小児わいせつ型は,犯行時の年齢が40歳以上の者の割合が45.1%であり,中でも,50歳以上の者の割合が32.6%と高く,65歳以上の者は20人(13.9%)であった。一方,19歳以下の者は1人(0.7%)であった。平均年齢は41.9歳であり,性犯罪者類型別では最も高かった。教育程度は中学卒業の割合が48.6%と高かった。

オ 小児強姦型

小児強姦型は,犯行時の年齢が19歳以下の者は4人(9.8%)であり,65歳以上の者は2人(4.9%)であった。平均年齢は36.2歳であった。教育程度が中学卒業の割合が56.1%と高かったほかは,基本的属性において,他の性犯罪者類型と比べて目立つ特徴は認められなかった。

カ 痴漢型

痴漢型は,犯行時の年齢が40歳以上の者が51.3%と約半数を占めたが,そのうち65歳以上の者は11人(3.5%)であった。19歳以下の者はおらず,平均年齢は41.4歳と,性犯罪者類型別では小児わいせつ型に次いで高かった。また,教育程度が大学進学の割合が33.2%と高かった。

キ 盗撮型

盗撮型には,犯行時の年齢が19歳以下の者も65歳以上の者もおらず,平均年齢は37.4歳であった。婚姻状況が未婚の者の割合が62.3%と高く,教育程度では,大学進学の割合が38.2%と高かった。

(2)前科等

性犯罪者類型別に,前科等を見ると,6-4-3-4図のとおりである。

6-4-3-4図 性犯罪者類型対象者 前科等(性犯罪者類型別)
6-4-3-4図 性犯罪者類型対象者 前科等(性犯罪者類型別)
Excel形式のファイルはこちら

性犯罪者類型別の前科等について,性犯罪者類型対象者全体の傾向(CD-ROM参照)と比較したところ,各類型の特徴は次のとおりである。

ア 単独強姦型

単独強姦型では,前科のある者の割合は42.0%(166人)であるが,性犯罪前科のある者はそのうちの約半数(80人)であり,性犯罪以外の前科のある者の割合が21.8%と高かった。性犯罪前科のある者80人について,性犯罪前科の裁判内容を見ると,罰金が11人(単独強姦型のうちの構成比2.8%),懲役(執行猶予)が26人(同6.6%),懲役(実刑)が49人(同12.4%)であった(重複計上による。)。性犯罪前科の罪名を見ると,強姦による前科のある者が46人(同11.6%),強制わいせつによる前科のある者が37人(同9.4%),条例違反による前科のある者が11人(同2.8%)であった(重複計上による。)。

イ 集団強姦型

集団強姦型では,性犯罪前科のある者の割合は2.4%(2人)であり,他の性犯罪者類型と比べて最も低い一方で,性犯罪以外の前科のある者の割合が28.9%と高かった。また,性非行以外の非行による保護処分歴(自動車運転過失致死傷等又は交通法令違反の非行名のみの保護処分を含まない。以下この章において同じ。)のある者の割合が36.1%と最も高かった。初回の性非行・性犯罪時(性非行による前歴・保護処分歴,性犯罪による前科・前歴のいずれかがある場合の最初の性非行・性犯罪に係る処分時をいい,処分時が不明の場合は,当該事件に係る検挙時をいう。以下この章において同じ。)の年齢が29歳以下の者が79.5%であり,調査対象事件中の性犯罪が初回の性犯罪である者が83人中80人(96.4%)であった。

ウ 強制わいせつ型

強制わいせつ型では,性犯罪前科のある者の割合は21.0%(144人)であった。性犯罪前科のある者144人について,性犯罪前科の裁判内容を見ると,罰金が82人(強制わいせつ型のうちの構成比12.0%),懲役(執行猶予)が46人(同6.7%),懲役(実刑)が51人(同7.4%)であった(重複計上による。)。性犯罪前科の罪名を見ると,強姦による前科のある者が25人(同3.6%),強制わいせつによる前科のある者が50人(同7.3%),条例違反による前科のある者が90人(同13.1%)であった(重複計上による。)。

エ 小児わいせつ型

小児わいせつ型では,前科のある者の割合は38.2%(55人)であるが,性犯罪前科のある者の割合は14.6%と低く,性犯罪以外の前科のある者の割合が23.6%と高かった。性犯罪前科のある者21人について,性犯罪前科の裁判内容を見ると,罰金が6人(小児わいせつ型のうちの構成比4.2%),懲役(執行猶予)が15人(同10.4%),懲役(実刑)が12人(同8.3%)であった(重複計上による。)。性犯罪前科の罪名を見ると,強姦による前科のある者が4人(同2.8%),強制わいせつによる前科のある者が18人(同12.5%),条例違反による前科のある者が7人(同4.9%)であった(重複計上による。)。初回の性非行・性犯罪時の年齢層別構成比では,40歳以上の者の割合が39.6%と最も高かった。

オ 小児強姦型

小児強姦型では,性犯罪前科のある者の割合は12.2%(5人)と低く,性非行による保護処分歴のある者はいなかった。性犯罪前科のある者5人について,性犯罪前科の裁判内容を見ると,罰金が2人(小児強姦型のうちの構成比4.9%),懲役(実刑)は3人(同7.3%)であった。性犯罪前科の罪名を見ると,強姦による前科のある者が2人(同4.9%),強制わいせつによる前科のある者が1人(同2.4%),条例違反による前科のある者が2人(同4.9%)であった。

カ 痴漢型

痴漢型は前科のある者の割合が91.1%(286人)であり,性犯罪前科のある者の割合は85.0%と最も高く,複数回の性犯罪前科のある者の割合も67.5%と最も高かった。性犯罪前科のある者267人について,性犯罪前科の裁判内容を見ると,罰金が240人(痴漢型のうちの構成比76.4%),懲役(執行猶予)が119人(同37.9%),懲役(実刑)が91人(同29.0%)であり(重複計上による。),いずれも他の性犯罪者類型と比べて高い割合を占めていた。性犯罪前科の罪名を見ると,強姦による前科のある者は10人(同3.2%)であったが,強制わいせつによる前科のある者は68人(同21.7%),条例違反による前科のある者は250人(同79.6%)であり(重複計上による。),高い割合であった。一方,保護処分歴のある者の割合は6.7%と性犯罪者類型別では最も低かった。痴漢型では,初回の性非行・性犯罪時の平均年齢(33.1歳)から犯行時の平均年齢(41.4歳)までの経過年数は約8年と,他の性犯罪者類型と比べて最も長かった。

キ 盗撮型

盗撮型は,性犯罪前科のある者の割合が64.9%(50人)と高く,複数回の性犯罪前科がある者の割合は46.8%と痴漢型に次いで高かった。性犯罪前科のある者50人について,性犯罪前科の裁判内容を見ると,罰金が48人(盗撮型のうちの構成比62.3%),懲役(執行猶予)が16人(同20.8%),懲役(実刑)が10人(同13.0%)であり(重複計上による。),性犯罪前科により罰金に処せられている者と懲役(執行猶予)に処せられている者の割合が痴漢型に次いで高かった。性犯罪前科の罪名を見ると,強姦による前科のある者はなく,強制わいせつによる前科のある者は7人(同9.1%),条例違反による前科のある者は50人(同64.9%)であった(重複計上による。)。盗撮型では,初回の性非行・性犯罪時の平均年齢(33.0歳)から犯行時の平均年齢(37.4歳)までの経過年数は約4年と,痴漢型に次いで長かった。

(3)初回の性非行・性犯罪時の年齢

性犯罪者類型別に,初回の性非行・性犯罪時の年齢及び累積人員比率(横軸の年齢までに初回の性非行・性犯罪に及んだ者の累積人員の比率をいう。)を見ると,6-4-3-5図のとおりである。

累積人員比率を見ると,集団強姦型は,他の性犯罪者類型と比べて若い年齢層で急激に上昇しており,初回の性非行・性犯罪に及ぶ年齢が若い者が多く,24歳までに半数の者が初回の性非行・性犯罪に及んでいる。一方,小児わいせつ型は,他の性犯罪者類型と比べてなだらかに上昇し続け,34歳までに半数の者が初回の性非行・性犯罪に及び,それ以降も,各年齢層において初回の性犯罪に及ぶ者が一定数ずついることが分かる。

6-4-3-5図 性犯罪者類型対象者 初回の性非行・性犯罪時の年齢による累積人員比率
6-4-3-5図 性犯罪者類型対象者 初回の性非行・性犯罪時の年齢による累積人員比率
Excel形式のファイルはこちら