被収容者には,食事及び飲料(湯茶等)が支給される。平成27年度の成人の受刑者一人当たりの一日の食費(予算額)は542.7円(主食費117.83円,副食費424.87円)である。高齢者,妊産婦,体力の消耗が激しい作業に従事している者や,宗教上の理由等から通常の食事を摂取できない者等に対しては,食事の内容や支給量について配慮している。また,被収容者には,日常生活に必要な衣類,寝具,日用品等も貸与又は支給されるが,日用品等について自弁のものを使用することも認めている。なお,同年度の刑事施設の被収容者一人一日当たりの収容に直接に必要な費用(予算額)は,1,789円である(法務省矯正局の資料による。)。
刑事施設には,医師その他の医療専門職員が配置されて医療及び衛生関係業務に従事している。さらに,専門的に医療を行う刑事施設として,医療刑務所4庁(八王子,岡崎,大阪及び北九州)を設置しているほか,医療重点施設9庁(札幌,宮城,府中,名古屋,大阪,広島,高松及び福岡の各刑務所並びに東京拘置所)を指定し,これら13庁には,医療機器や医療専門職員を集中的に配置している。
矯正医官の人員は,矯正施設における医療の特殊性・困難性や,国家公務員であるがゆえの勤務条件等の影響を受け,現在その定員の8割以下となっている(法務省矯正局の資料による。)。そうした中,平成25年7月,医師や弁護士等外部有識者からなる「矯正医療の在り方に関する有識者検討会」が立ち上げられ,矯正医療の充実強化のための方策が検討された結果,26年1月,矯正医官の待遇改善や地域医療との共生・連携の在り方等を内容とする「矯正施設の医療の在り方に関する報告書」が法務大臣に提出された。この報告書の提言を踏まえ,法務省は,矯正医官の確保策として,大学医学部等を対象とした矯正医療の積極的広報,各種医療関係団体への医師派遣等の協力要請等の取組を実施している。また,27年8月には,矯正医官について,その能力の維持向上の機会を付与することなどにより,その人材を継続的かつ安定的に確保するため,矯正医官の兼業及び勤務時間の特例等に関する法律(平成27年法律第62号)が成立し,兼業の許可等に関する国家公務員法の特例を設けるなどの措置が講じられた。