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平成27年版 犯罪白書 はしがき

はしがき

我が国の犯罪情勢は,刑法犯の認知件数が平成14年に戦後最多を記録した後,国民と政府が一体となって治安の回復に取り組むなどした結果,刑法犯の認知件数は大きく減少するなど,一定の改善傾向が見られるが,凶悪な殺傷事件の発生が後を絶たないほか,特殊詐欺やサイバー犯罪,危険ドラッグに係る犯罪の発生等,依然として予断を許さない状況にある。犯罪者の動向について見ると,平成26年における一般刑法犯の検挙人員は戦後最少を記録し,初犯者や初入者の人員が減少傾向にある一方で,検挙人員に占める再犯者の比率や入所受刑者に占める再入者の比率は上昇し続けている。平成19年版犯罪白書では,約3割の再犯者によって,約6割の犯罪が行われていることが明らかにされており,平成25年12月に閣議決定された「「世界一安全な日本」創造戦略」が示すように,我が国の良好な治安を確保し,国民が安全で安心して暮らせる国であることを実感できる「世界一安全な国,日本」を創り上げるためには,対象者の特性に応じた指導や支援の強化等の再犯防止対策の重要性がますます高まっている。

こうした中,法務総合研究所においても,平成24年に犯罪対策閣僚会議が決定した「再犯防止に向けた総合対策」を踏まえ,再犯防止に関する各種研究を実施しているところである。本白書では,平成26年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観するとともに,国民が身近に不安を感じ,社会的関心の高い犯罪の一つである性犯罪に着目し,「性犯罪者の実態と再犯防止」と題して特集を組むこととした。

性犯罪に関しては,平成18年版犯罪白書において,性犯罪の動向や性犯罪者の実態,再犯状況等を分析するとともに,同年度から実施されることになった「性犯罪者処遇プログラム」の概要等を紹介し,平成22年版犯罪白書においても,重大事犯の一つとして強姦の動向や再犯状況を分析したが,その後も,悪質な性犯罪の発生は後を絶たず,強姦や強制わいせつの検挙人員に占める再犯者の比率も5割前後で推移している状況にある。

性犯罪は,被害者の心身に深刻な被害を与える犯罪の一つであり,前記総合対策において,性犯罪者に対する指導・支援の強化が重点施策の一つとして掲げられていることからも,性犯罪者の再犯を防止し,新たな性犯罪の発生を抑止するためには,近年における性犯罪者の実態や再犯状況を改めて分析し,その処遇の在り方について検討しておくことが重要である。そこで,本白書の特集では,強姦や強制わいせつを中心とする性犯罪の動向のほか,性犯罪者の再犯防止に向けた各種の取組の実情を紹介するとともに,法務総合研究所の特別調査による性犯罪者の実態や再犯状況に関する分析結果を紹介し,性犯罪者の処遇の充実に向けた展望を試みた。

本白書が,性犯罪者の処遇に関する各種施策を検討する際の基礎資料として利用され,また今後の再犯防止施策を進めるに当たり,多少なりとも寄与することができれば幸いである。

終わりに,本白書の作成に当たり,最高裁判所事務総局,内閣府,警察庁,総務省,外務省,財務省,文部科学省,厚生労働省,国土交通省その他の関係各機関から多大の御協力をいただいたことに対し,改めて謝意を表する次第である。


平成27年11月


法務総合研究所長 赤根智子