行き場のない刑務所出所者等の社会での受入れのための方策等について,その概要を述べてきた。
更生保護施設は,明治時代の民間篤志家の釈放者保護事業が源流であり,以降,刑務所出所者等の受入れに,大きな役割を果たしている。刑務所出所者等の抱える問題の複雑化,多様化と共に,その処遇力を強化して対応していることは,先に述べたとおりであるが,引き続き,生活環境の整わない者を適切に受け入れ,専門的処遇を施し,就労支援を強化するなどして,その自立を支援することが望まれる。
自立更生促進センターにおいては,保護観察官による濃密な指導監督や充実した就労支援が行われているが,なお受入れの強化に努め,その機能を十分に発揮する必要がある。
また,緊急的住居確保・自立支援対策は,「自立準備ホーム」という,これまでにない形態により,住居及び生活指導を提供するもので,薬物依存者等,従前の方策では十分に受け入れることができなかった刑務所出所者等の新たな受け皿として積極的に活用されている。今後,更に多くの事業者の参画を求め,刑務所出所者等のニーズに応える多様な受け皿が拡充されていくことが期待される。
高齢・障害者に対する福祉的支援への橋渡しの仕組みは,これまで,行き場がないまま釈放されていた自立困難者の生活環境を整える画期的な取組であり,既に相応の実績を挙げているところであるが,今後は,対象者の選定,適切な受け皿の確保,そのフォローアップ等について,検証を重ねつつ,福祉サービスを必要とする者が,適切なサービスをより広範に利用できるようにしていくことが望まれる。
また,これらの近年の取組は,これまで刑務所出所者等と直接関わりを持たなかった団体や個人が,刑務所出所者等に関わり,他分野での支援の実績を,刑務所出所者等の再犯防止・改善更生支援に生かすことであって,刑務所出所者等の受入れの裾野の拡大,改善更生や再犯防止策の充実に,大きな意味を持つものといえる。刑務所出所者等が地域社会の中で責任ある存在として自立を果たしていくためには,これらの取組の発展と平行して,適切な情報発信等を通じて,非行少年や犯罪者に対する処遇の実状や課題を広く国民に伝え,刑務所出所者等の改善更生,再犯防止の理解者,協力者を増やしていく必要もあり,それが適切な住居確保,福祉的支援の一層の充実にもつながっていくものと思われる。