保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対する処遇は,基本的に,特定暴力対象者に対する処遇,専門的処遇プログラム及び中間処遇制度を除き,仮釈放者及び保護観察付執行猶予者についてと同様である(第2編第5章第2節2項参照)が,以下のような取組も行っている。
少年の保護観察対象者についても類型別処遇の制度が導入されている(第2編第5章第2節2項(3)イ(ア)参照)。なお,保護観察処分少年のうち,交通短期保護観察及び短期保護観察の対象者については,類型別処遇制度は適用されないが,一定期間を超えて保護観察を継続する場合等,一般の例による保護観察処遇へ移行したときは,類型の検討対象となる。
平成23年末における保護観察処分少年及び少年院仮退院者の主要な類型の認定状況は,3-2-5-6表のとおりである。
殺人等の凶悪重大な事件を起こした保護観察処分少年及び少年院仮退院者は,資質の問題が大きく,家族関係等にも複雑かつ深刻な問題を抱えていることが多いため,段階別処遇において最上位の段階に編入し,保護観察官の関与を深め,社会適応力を涵養するほか,しょく罪指導プログラムによる処遇を行うなどして被害者等の意向も踏まえ謝罪にも努めさせている(第2編第5章第2節2項(3)イ(ウ)参照)。
仮釈放者及び保護観察付執行猶予者のように,専門的処遇プログラムによる処遇を受けることを特別遵守事項として義務付けることは,保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しては行っていないものの,その者の自発的意思等に基づいて,専門的処遇プログラムが実施されることがある(第2編第5章第2節2項(3)イ(イ)参照)。
平成23年度から,成人を含めた保護観察処遇の一環として,自己有用感の涵養,規範意識や社会性の向上を図るため,公共の場所での清掃活動や福祉施設での介護補助活動といった地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を継続的に行うことを内容とする社会貢献活動を実施している(第2編第5章第2節2項(6)参照)。平成23年度における社会貢献活動の実施回数は延べ266回であり,その参加人数は延べ625人(うち保護観察処分少年356人,少年院仮退院者72人)であった(法務省保護局の資料による。)。
また,従前から,主として少年の保護観察対象者を対象として,公共の場所での清掃活動や福祉施設での介護補助活動のほか,陶芸教室・料理教室等での学習,農作業,スポーツ活動,レクリエーション活動等に参加させ,対象者の社会性を育み,社会適応能力を向上させることを目的として社会参加活動を実施している。平成23年度における社会参加活動の実施回数は341回であり,実施回数が多かった活動は,「清掃・環境美化活動」(118回),「高齢者等に対する介護・奉仕活動」(105回),「創作・体験活動・各種講習等」(58回)であった。その参加人数は,保護観察対象者が延べ970人,その保護者・家族が延べ142人であった(法務省保護局の資料による。)。
少年の保護観察対象者についても計画的な就労支援が実施されているが,その一環として,平成19年10月から,農業に就く意思のある少年院仮退院者等を宿泊させて,指導監督や農業実習を通じた就労支援を行うことを目的とした沼田町就業支援センターが運営されている(第2編第5章第2節2項(7)参照)。
保護観察所においては,保護観察処分少年及び少年院仮退院者の保護者に対し,少年が20歳に達するまでの間,少年の生活実態等を把握して適切にその監護に当たるべきことや,少年の改善更生を妨げていると認められる保護者の行状を改めるべきことなどについて指導又は助言を行うほか,保護者会を開催するなどして,少年の非行に関連する問題の解消に資する情報の提供等を行っている。