開発途上国の中には,法制度やその運用体制の整備の遅れが,国民生活の安定と社会の発展の障害となっている国がある。このような国からの要請に基づき,その国が自らの法制度とその運用を改善しようとする自助努力を支援するのが法制度整備支援である。
この支援は,開発途上国において「法の支配」が確立され,法制度が適正に機能することにより,その国の政治・社会・経済が安定し,これらの国の持続的な発展につながることを目指すものであるが,支援を受ける開発途上国の安定と発展は,その国が属する地域全体の安定と発展を通じて,国際社会の平和と安全に依存する我が国の安全と発展にもつながっている。したがって,この分野における支援は,我が国にとっても,開発途上国との友好関係の維持を超えた重要な意味を持っている。
我が国による具体的な支援は,その多くが政府開発援助(ODA)の枠組みで,独立行政法人国際協力機構(JICA)や関係者の協力により行われてきたが,法務省も,これを専門に手がける部署として法務総合研究所内に国際協力部を設置し,職員の派遣,支援対象国の関係者の研修等の支援活動を活発に展開している。我が国は,1994年にベトナムに対する支援を開始して以来,カンボジア,ラオス,インドネシア,東ティモール,中国,モンゴル,ネパール,ウズベキスタン等の主としてアジア諸国に対して支援を行ってきたほか,現在,ミャンマーに対する支援を準備中である。支援の内容としては,民商事法分野のものが中心であるが,刑事法分野でも,これまで,ベトナムの検察官向けの実務マニュアルの作成支援及び刑事訴訟法改正のための知識・情報の提供を目的としたセミナー・研修,ラオスの刑事訴訟法教材作成に対する支援,ネパール政府の「刑事法改革改善委員会」の委員等を対象とした刑事法制の整備と運用改善のためのセミナー・研修,東ティモール司法省の職員を対象とした「逃亡犯罪人引渡法」及び「麻薬取締法」を題材とした法案起草能力の向上を目的とした研修等を実施している。