前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択

平成22年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/3

3 矯正指導

受刑者処遇の中核は,作業のほか,改善指導及び教科指導である。これらの指導に加え,刑執行開始時及び釈放前の指導も行われるが,これらの四つを総称して矯正指導という。

(1)刑執行開始時の指導

受刑者には,入所直後,原則として2週間の期間で,受刑等の意義や,矯正処遇を受ける上で前提となる事項(作業上の留意事項や改善指導等の趣旨・概要等),刑事施設における生活上の心得等について,指導が行われる。

(2)改善指導

改善指導とは,受刑者に対し,犯罪の責任を自覚させ,健康な心身を培わせ,社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるために行う指導をいい,一般改善指導及び特別改善指導がある。

一般改善指導は,講話,体育,行事,面接,相談助言その他の方法により,<1>被害者感情を理解させ,罪の意識を培わせること,<2>規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し,心身の健康の増進を図ること,<3>生活設計や社会復帰への心構えを持たせ,社会適応に必要なスキルを身に付けさせることなどを目的として行われる。

特別改善指導は,薬物依存があったり,暴力団員であるなどの事情により,改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し,その事情の改善に資するよう特に配慮して行う改善指導である。特別改善指導としては,現在,<1>「薬物依存離脱指導」(薬物使用に係る自己の問題性を理解させた上で,再使用に至らないための具体的な方法を考えさせるなど),<2>「暴力団離脱指導」(警察等と協力しながら,暴力団の反社会性を認識させる指導を行い,離脱意志の醸成を図るなど),<3>「性犯罪再犯防止指導」(性犯罪につながる自己の問題性を認識させ,再犯に至らないための具体的な方法を習得させるなど。第7編第3章第1節2項(1)参照),<4>「被害者の視点を取り入れた教育」(罪の大きさや被害者等の心情等を認識させるなどし,被害者等に誠意をもって対応するための方法を考えさせるなど。第7編第3章第1節1項(1)参照),<5>「交通安全指導」(運転者の責任と義務を自覚させ,罪の重さを認識させるなど)及び<6>「就労支援指導」(就労に必要な基本的スキルとマナーを習得させ,出所後の就労に向けての取組を具体化させるなど)の6類型の改善指導が実施されている。

(3)教科指導

教科指導とは,学校教育の内容に準ずる内容の指導である。社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対して行う(補習教科指導)ほか,学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資すると認められる受刑者に対してもその学力に応じた教科指導(特別教科指導)を行っている。

平成19年度からは,法務省と文部科学省の連携により,刑事施設内において,高等学校卒業程度認定試験を実施し,また,4の指定された刑事施設において,同試験の受験に向けた指導を積極的に実施している。21年度の受験者数は305人,合格者数は,高卒認定合格者が98人,一部科目合格者が204人であった(文部科学省生涯学習政策局の資料による。)。

(4)釈放前の指導

受刑者には,釈放前に,原則として2週間の期間で,現実に社会生活を送る上で必要となる指導が行われる。講話や個別面接等の方法で,社会の状況や社会における各種手続に関する知識を付与したりするほか,必要に応じ,刑事施設の職員が同行して社会見学を行うなどの方法で指導が行われる。また,刑事施設には,「開放寮」等と称されている,施錠が厳格に行われないなど開放的な居住区域が設けられているが,釈放前の時期には,円滑な社会復帰を図るために,受刑者の処遇は,この居住区域で行われることもある。