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 平成20年版 犯罪白書 第7編/第6章/第3節 

第3節 まとめ

 高齢犯罪者の問題は,今後の我が国社会が否応なく背負っていかなければならない大きな問題である。これまで何度も指摘してきたように,現在のような高齢犯罪者に対する従来どおりの対策だけでは,今後10年以内に高齢者となる層が多大な犯罪をもたらす危険性に十分な対処ができ得るか問題があろう。
 高齢犯罪者の特性としては,親族等から疎遠となり,単身で経済的にも不安定な状態が多いこと,高齢期特有の心身上の問題点や疾病等を抱えている場合が多く,性格・行動特性からも生活指導上の困難性を有していること,さらには,再犯を繰り返している者が多くいることなどが挙げられる。一方で,高齢期に入っても衰えることなく,稼働能力もあることから,就労による社会貢献を果たし得る者がいることにも目を向ける必要があるだろう。
 そのような高齢犯罪者を多く抱える社会における根本的な対策としては,何よりもまず彼らの生活の安定を確立した上で,社会の中で孤立させることなく安らぎと生きがいのある生活を提供することが極めて重要である。そのためには,刑事司法だけでなし得ることのみならず,福祉制度の拡充,住まいの場や日中活動の場の拡充,稼働能力のある高齢者に対する就労支援策の検討,地域社会の協力体制の確立などの取組と,刑事司法機関における取組とを密に連携させながら,社会全体で一体となって対策を講じていくことが求められる。
 今後5年以内に団塊の世代が高齢期に達することで,我が国の高齢化が今以上に進行することは明らかであり,そのような社会の中での犯罪対策について,今一度,根本から考え直すべき時期に来ているのではないかと思われる。