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 平成20年版 犯罪白書 第5編/第1章/第2節/1 

第2節 犯罪被害についての実態調査

1 概説

 刑事政策として効果的な治安対策を考える場合,その前提として,犯罪の発生状況を正確に把握しておくことが必要不可欠である。そのためには,[1]警察等の公的機関に認知された犯罪件数を集計する方法と,[2]一般国民を対象としたアンケート調査等により,警察等に認知されていない犯罪の件数(暗数)を含め,どのような犯罪が,実際どのくらい発生しているかという実態を調べる方法(暗数調査)がある。[2]の暗数調査は,定期的に実施することにより,初めて[1]の認知件数との経年比較が可能となる。[1]と[2]は,犯罪情勢を知る上で言わば表裏一体のものであり,お互いを相補う形で活用することによって有効な刑事政策を考えることができる。
 欧米の主要先進国では,以前から暗数調査の重要性が認識され,米国や英国では30年ほど前から,ほぼ毎年,全国規模の暗数調査が実施されており,その結果が刑事政策に反映されてきた。また,1989年(平成元年)には,犯罪被害の国際比較を目的として,国際犯罪被害実態調査(ICVS:International Crime Victimization Survey)が開始され,その後もおおむね4年ごとに世界規模で実施されて,国連機関の指導等の下,標準化された質問票を用いた調査に,これまで78か国・地域の30万人を超える人々が参加している。
 我が国では,法務総合研究所が,第4回国際犯罪被害実態調査に参加することとなり,2000年(平成12年)に第1回の犯罪被害実態(暗数)調査を実施した。以後4年ごとに同調査に参加し,2004年(平成16年)の第2回調査を経て,本年(平成20年)1月から3月にかけて,層化二段無作為抽出法により全国から選んだ16歳以上の男女6,000人(男女同数)を対象として,質問紙を用いた調査員による聞き取り方式及び調査対象者の自記式(調査対象者が自ら質問紙に回答を記入し,封をした上で調査員に手渡す方法で,性的事件被害の調査用)を併用して,第3回調査を実施した。前2回の調査と異なる点は,犯罪被害者等基本計画を具体化する一環として,より詳細に犯罪被害の状況を調査するため調査対象者数を倍にしたこと,男女別を問わず,すべての調査対象者に自記式調査票を用いて性的事件に関する調査を行ったことである。