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 平成20年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/3 

3 矯正指導

 刑事施設においては,作業と共に矯正処遇の中心となる改善指導及び教科指導が行われる。これらの指導に加えて,刑執行開始時及び釈放前の指導が行われ,四つを併せて矯正指導という。
(1)改善指導
 改善指導とは,受刑者に対し,犯罪の責任を自覚させ,健康な心身を培わせ,社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるために行う指導をいい,一般改善指導及び特別改善指導がある。
 一般改善指導とは,講話,体育,行事,面接,相談助言その他の方法により,[1]被害者感情を理解させ,罪障感を養うこと,[2]規則正しい生活習慣や健全な考え方を付与し,心身の健康の増進を図ること,[3]生活設計や社会復帰への心構えを持たせ,社会適応に必要なスキルを身に付けさせること等を目的として行う指導をいう。
 特別改善指導とは,薬物依存があったり,暴力団員であるなどの事情により,改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者に対し,その事情の改善に資するよう特に配慮した指導をいう。
 特別改善指導では,[1]「薬物依存離脱指導」(薬物使用に係る自分の問題を理解させた上で,再使用に至らないための具体的な方法を考えさせる等),[2]「暴力団離脱指導」(警察機関との連携の下,暴力団の反社会性を認識させる指導等を行い,離脱意志の醸成を図る等),[3]「性犯罪再犯防止指導」(性犯罪につながる自己の問題性を認識させ,再犯しないための具体的な方法を習得させる等),[4]「被害者の視点を取り入れた教育」(罪の大きさや被害者等の心情等を認識させるなどし,被害者等に誠意をもって対応するための方法を考えさせる等),[5]「交通安全指導」(運転者の責任と義務を自覚させ,罪の重さを認識させる等)及び[6]「就労支援指導」(就労生活に必要な基本的スキルとマナーの習得等を図り,出所後の就労に向けての取組を具体化させる等)の6類型が実施されている。
 なお,平成19年度(会計年度)において,全国の刑事施設のうち,特別改善指導を実施した施設(社会復帰促進センターを含む。)は,[1]「薬物依存離脱指導」74施設,[2]「暴力団離脱指導」35施設,[3]「性犯罪再犯防止指導」20施設,[4]「被害者の視点を取り入れた教育」75施設,[5]「交通安全指導」48施設及び[6]「就労支援指導」44施設であった(法務省矯正局の資料による。)。
(2)教科指導
 教科指導とは,社会生活の基礎となる学力を欠くことにより改善更生及び円滑な社会復帰に支障があると認められる受刑者のほか,学力の向上を図ることが円滑な社会復帰に特に資すると認められる者に対し,学校教育に準ずる内容の指導を行うことをいう。
 平成19年度から法務省と文部科学省とが連携し,刑事施設内においても,高等学校卒業程度認定試験(旧大検)を実施している。同年度第1回試験においては,80人が受験し,認定試験合格者が22人,科目合格者が57人であった。同年度第2回試験においては,88人が受験し,認定試験合格者が13人,科目合格者が73人であった(文部科学省の資料による。)。
(3)刑執行開始時の指導
 刑執行開始時の指導は,刑事施設に新たに入所した者に対し,受刑等の意義,処遇要領に定める個別の処遇目標及びその目標を達成するための方法や,刑事施設における生活上の心得等について,理解させるために行う。その期間は,原則として2週間である。
(4)釈放前の指導
 釈放前の受刑者に対しては,原則として2週間,釈放後の社会生活において直ちに必要となる知識等について理解させるための指導を行う。講話,個別面接その他の方法により,社会復帰後の就職,社会保障制度やその利用手続,保護観察制度その他更生保護に関する知識を付与するだけでなく,必要に応じ,一般社会における生活にできる限り近似した日常生活を経験させたり,一般社会における生活,勤労及び社会奉仕活動等を実際に経験させることもある。