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 平成18年版 犯罪白書 第6編/第1章/1 

第6編 刑事政策の新たな潮流

第1章 はじめに

1 犯罪情勢の推移と国民の不安の高まり

 「昭和の刑事政策」を特集した平成元年版犯罪白書は,当時の我が国の治安に関し,刑事政策上,今後の課題が少なからず存在すると指摘しながらも,「戦後の社会環境等の改善に加えて,刑事政策における総合的な施策が功を奏して,世界で最も安全な国の一つといわれる我が国の平穏な社会が実現した」と評価した。
 その後の犯罪情勢を見ると,国民の生命・身体・財産等を侵害する犯罪の大半が含まれる一般刑法犯の認知件数は,平成8年(約181万件)以降,毎年戦後最多を更新し,14年には戦後最多の約285万件を記録した。そして,一般刑法犯認知件数の大部分を占めている窃盗のみならず,その他の一般刑法犯についても,従来から比較的件数の多い傷害,住居侵入等のほか,強盗,強制わいせつ,強姦等の悪質な犯罪の認知件数の増加傾向も顕著となっている。また,一般刑法犯の検挙率も低下し,13年には戦後最低の19.8%を記録した。
 このような犯罪情勢の悪化に伴い,治安の悪化がしばしば指摘され,国民の治安に対する不安も高まるとともに,治安の更なる悪化が懸念されるようになった。