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 平成17年版 犯罪白書 第2編/第6章/第6節/4 

4 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律

 平成17年7月15日,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成15年法律第110号。以下「心神喪失者等医療観察法」という。)が施行された。心神喪失者等医療観察法は,心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った者について,継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって,病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発防止を図り,本人の社会復帰を促進することを目的とするものである。
 心神喪失者等医療観察法による処遇手続の流れは,2-6-6-4図のとおりである。

2-6-6-4図 心神喪失者等医療観察法による処遇手続の流れ

 心神喪失者等医療観察法による処遇の対象になるのは,殺人,放火,強盗,強姦・強制わいせつ(以上については未遂を含む。)又は傷害の罪に当たる行為を行った者であって,不起訴処分において心神喪失者若しくは心神耗弱者と認められたもの,又は心神喪失を理由とする無罪の確定裁判若しくは心神耗弱を理由に刑を減軽する確定裁判(執行すべき刑期がある場合を除く。)を受けたものである。これら対象者については,検察官の申立てにより,裁判官1人と精神保健審判員(精神科医)1人からなる地方裁判所の合議体が審判を行い,処遇の要否・内容を決定する。また,退院や処遇の終了についても,同じ構成の合議体が審判を行い,これを決定する。

(1) 入院による医療

 裁判所の入院決定(医療を受けさせるために入院をさせる旨の決定)を受けた者は,指定入院医療機関に入院して,国による手厚い専門的な医療を受ける。入院中は,保護観察所による退院後の生活環境の調整も行われる。

(2) 地域社会における処遇と社会復帰調整官

 通院決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた者及び退院許可決定(退院を許可するとともに入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた者は,原則として3年間(最大で5年間),指定通院医療機関による入院によらない医療及び保護観察所による精神保健観察を受ける。精神保健観察は,継続的な医療を確保することを目的として,本人との面接や関係機関からの報告等を通じて本人の通院状況や生活状況を見守り,必要な指導等を行うものである。
 また,本人が地域社会において安定した生活を営んでいくためには,継続的な医療に加えて,必要な精神保健福祉サービス等の援助が行われることが大切であり,地域で生活する精神障害者に対するサービスとして,都道府県・市町村(精神保健福祉センター・保健所等)による援助や精神障害者社会復帰施設等の利用も行われる。
 このように地域社会における処遇では,医療,精神保健観察,援助という,いわば三本柱が適正かつ円滑に実施されることが必要であり,保護観察所は,そのために指定通院医療機関及び都道府県・市町村と協議して処遇の実施計画を定め,処遇方針の統一と役割分担の明確化を図る。保護観察所,指定通院医療機関,都道府県・市町村等の関係機関は,同計画に基づいて処遇を実施し,保護観察所は,これらの処遇が実施計画に基づいて適正かつ円滑に実施されるよう,関係機関間の協力体制を整備し,関係機関による会議を開催するなどして相互の緊密な連携の確保に努めている。
 これらの事務に従事するため,保護観察所に社会復帰調整官が新たに配置されている。

●精神保健審判員(P156)
 審判において裁判官と合議体を形成する医師であり,毎年,厚生労働大臣から最高裁判所に提出される名簿に登載された医師(精神保健判定医)のうち,地方裁判所が毎年あらかじめ選任した者の中から処遇事件ごとに1人が任命されます。裁判官との評議では精神障害者の医療に関する学識経験に基づいて意見を述べます。

●指定入院医療機関,指定通院医療機関(P156)
 心神喪失者等医療観察法による処遇において医療を提供する機関で,厚生労働大臣により指定されます。指定入院医療機関は,国,都道府県又は特定(地方)独立行政法人が開設する病院であって厚生労働省令で定める基準に適合する病院の中から指定され,指定通院医療機関は,厚生労働省令に定める基準に適合する病院や診療所等の中から指定されます。

●社会復帰調整官(P156)
 保護観察所において精神保健観察の事務に従事する社会復帰調整官は,精神保健福祉士のほか,保健師,看護師,作業療法士若しくは社会福祉士で精神障害者に関する援助業務等に従事した経験を有する者又は法務大臣がこれらと同等以上の専門的知識を有すると認める者でなければならないとされています。