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 平成17年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/4 

4 詐欺等

 詐欺の認知件数は,平成13年までおおむね横ばい又は減少傾向にあったが,14年以降年々大幅に増加し,16年は8万3,015件(前年比2万2,717件(37.7%)増)と昭和35年以降で最多を記録した。検挙率は,大幅に低下し続けており,16年は32.1%(同18.3ポイント低下)と戦後最低を記録した。
 最近,振り込め詐欺が急増しており,これが詐欺の認知件数の急増要因の一つといえる。
 振り込め詐欺(恐喝)とは,オレオレ詐欺(恐喝)(電話を利用して,親族,弁護士,警察官等を装い,交通事故示談金等の名目で預貯金口座に振り込ませるなどの方法により,だまし取り又は脅し取る詐欺又は恐喝事件をいう。),架空請求詐欺(恐喝)(郵便,インターネット等を利用して,架空料金を預貯金口座に振り込ませるなどの方法により,だまし取り又は脅し取る詐欺又は恐喝事件をいう。)及び融資保証金詐欺(実際には融資しないのに,融資するように装った内容の文書を送付するなどし,融資申込みをした者から保証金等の名目で預貯金口座に振り込ませるなどの方法により,だまし取る詐欺事件をいう。)の総称である。平成16年の認知件数は,2万5,667件(このうち既遂2万194件)であり,被害総額は,283億円を超えた。
 これに悪用される預貯金口座は,不正に入手された他人名義又は架空人名義の口座であることが多いが,金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律の一部を改正する法律(平成16年法律第164号)が同年12月30日から施行され,預貯金通帳の有償譲受け等が処罰されることになった。また,同様に,振り込め詐欺(恐喝)に悪用される携帯電話機は,契約者が特定できないものであることが多いが,携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号)が公布され,このうち,氏名及び連絡先を確認しないまま業として有償で通話可能な携帯電話機を貸与する行為等を処罰する規定が17年5月から施行された。
 平成16年の振り込め詐欺(恐喝)の類型別の認知件数,被害総額,検挙件数及び検挙人員は,以下のとおりである(警察庁刑事局の資料による。)。
(1) オレオレ詐欺の認知件数は,1万4,459件(このうち既遂9,163件)と前年1年間の認知件数の2.2倍に増加しており,その被害総額は,184億7,446万7,084円(前年比141億5,619万8,442円(327.8%)増)であった。これを手口別に見ると,交通事故示談金名目によるものが8,832件(61.1%)と最も多く,次いで,サラ金等の借金返済名目3,430件(23.7%),妊娠中絶手術費用支払名目693件(4.8%)の順であった。検挙件数は911件(前年比732件(408.9%)増),検挙人員は270人(同212人(365.5%)増)であった。
  オレオレ恐喝の認知件数は,415件(このうち既遂352件)であり,その被害総額は6億5,426万2,020円,検挙件数は43件,検挙人員は35人と,いずれも前年より増加した。
(2) 架空請求詐欺(恐喝)の認知件数は,5,101件(このうち既遂5,011件)であり,その被害総額は,54億533万934円であった。これを手口別に見ると,有料サイト利用料金支払名目が2,646件(51.9%)と最も多く,次いで,サラ金等の借金返済・債権回収名目が1,966件(38.5%)であった。検挙件数は294件,検挙人員は207人であった。
(3) 融資保証金詐欺の認知件数は,5,692件(このうち既遂5,668件)であり,その被害総額は38億4,459万7,936円,検挙件数は57件,検挙人員は36人であった。