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少年非行の現状は,少年の人口に占める刑法犯検挙人員の比率が高水準にあり,少年による特異な凶悪犯罪が発生するなど,予断を許さない。少年非行の背景として,非行少年のうち相当数が資質や成長過程に様々な問題を抱え,家庭や友人,地域社会等の環境面でも恵まれていないとの指摘が多くされるなど,少年非行や非行少年の問題は,広く大きな関心を呼んでいる。
かねて議論されてきた少年法制を見ると,16歳未満の少年の事件でも検察官への逆送を可能とし,犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件は検察官への逆送を原則とすること等を内容とする改正少年法が,施行されて4年が経過した。さらに,本年3月には,14歳未満の少年でも少年院送致を可能とすること等を内容とする少年法等の改正案が先の通常国会に提出されるなど,議論はなお続いている。 最近の少年非行は,厳しい治安情勢とも相まって,国民の不安を増大させる原因の一つとなっており,少年非行を未然に防止するとともに,次代を担う少年を健全に育成することは,社会全体にとって極めて重要な課題である。 このような状況を踏まえ,本白書では,平成16年を中心に,犯罪の動向,犯罪者の処遇等を概観するとともに,「少年非行」を特集した。 今回の特集では,最近における我が国の少年非行の動向と非行少年の資質等を分析するとともに,非行少年に対する施設内及び社会内における処遇の実情,少年法改正後の重大事犯少年の実態と処遇を紹介し,併せて,諸外国の少年非行に係る司法制度等も概観し,今後の議論に資することとした。 少年非行は,家庭,友人,地域社会等の問題が複雑に絡み合って生じており,その防止及び非行少年の更生は,もとより刑事司法の枠内での取組だけで全うできるものではない。非行少年は,刑事司法の枠内で更生の機会を与えられるが,これはあくまで更生への第一歩であり,その後は,かつて生活していた家庭や地域社会に戻り,周囲の支援を得ながら自ら努力して立ち直り,自立し,初めて更生していくのである。少年非行を未然に防止するためにも,非行に走った少年を更生させるためにも,家族を始め地域社会の理解と支援が不可欠であることは,論をまたない。 本白書が,少年非行への対策を検討・研究する際の資料として広く利用されるとともに,国民一人ひとりが少年の健全育成のため何が必要かを自らの問題として考え,地域社会の中で少年の非行防止や非行少年の更生のため,様々な取組を進める過程において,少しでもお役に立てれば幸いである。 終わりに,本白書作成に当たり,最高裁判所事務総局,内閣府,警察庁,総務省,外務省,文部科学省,厚生労働省,国土交通省その他の関係機関から多大のご協力をいただいたことに対し,改めて謝意を表する次第である。 平成17年11月 中井 憲治 法務総合研究所長 |