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刑務所や少年院あるいは婦人補導院等の矯正施設に収容されている者が,時期がきて釈放される場合,帰住予定地では保護者や家族が引受けを拒否したり,また,たとえ引受けを承知したとしても,家庭環境や近隣,職場,友人関係等に,本人の更生を妨げるような事情が存在していることもしばしばある。これらの事情については,できることならば,在監,在院中に解決しておいて,本人が釈放後直ちに更生の途をたどることができるように調整しておくことが望ましい。ここに,在監,在院者の円滑な社会復帰をはかるための環境調査調整が,保護観察所の重要な業務の一つとされる理由がある。これは具体的には,保護観察所長の指名する担当者(大部分は保護司)が,本人の家庭環境,家族や近隣者の本人に対する感情,釈放後における生活設計等,本人をとりまく環境全般について,くわしく調査するとともに,問題点があれば相談にあずかって調整をほどこし,必要であれば,本人が収容されている施設まで出向いて面接したり,通信をしたりなどして,本人の社会生活への円滑な移行を援助する。調査調整の状況については,環境調査調整報告書を作成して,担当者が所属する保護観察所に提出し,保護観察所長はこれに意見を付して地方委員会と施設に送付するが,これは,それぞれ,仮釈放の審理や施設における処遇等の重要な参考資料となる。担当者は,本人が収容されている間は,継続して調査調整を行ない,少なくとも六月に一回は受入れ事情を環境追報告書によって報告することになっている。
環境調査調整の受理件数は,矯正施設収容者の減少にともない,III-82表に示すように漸次減少している。しかし,暴力犯罪者や麻薬犯罪者等のように調査調整のむずかしい事案は累増しており,とくに暴力犯罪者の中には暴力団体に所属する者も少なくなく,身体的危害をうける危険性をも内包しているから,民間人である保護司が担当するよりも,保護観察官が直接業務に当らねばならない事案もある。環境調査調整の処理状況は,III-83表からも綿密かつ敏速化していることがうかがわれるが,前記事情を考慮すると,この面の業務のいっそうの充実強化がのぞまれる。 III-82表 環境調査調整の受理状況(昭和33〜37年) III-83表 環境調査調整報告と環境追報告状況(昭和33〜37年) |