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 昭和39年版 犯罪白書 第三編/第三章/二/1 

1 仮出獄

(一) 仮出獄の新受と許否の決定

 最近五年間の仮出獄の新受と決定の状況をみると,III-67表のとおりで,新受および決定の人員が減少しているにもかかわらず,決定人員中に占める棄却,不許可の割合が増加している。ことに昭和三六年以降は,それ以前に比べ,著しい増加を示している。

III-67表 最近5年間の仮出獄の新受と決定の状況(昭和33〜37年)

 このように,仮出獄不相当と認められる者が増加していることは,累犯者や凶悪粗暴の犯罪者など,更生を困難ならしめる諸条件をもった者が,より多く審理の対象となり,これらの者に対する仮出獄の許否が慎重に検討されているためであろう。
 このことは,地方委員会が矯正施設の長から仮出獄の申請を受けてから,仮出獄許否の決定をするまでの審理期間が,III-68表の示すとおり,一月以内は逐年減少し,三月以内が逐年増加していることからもうかがわれる。

III-68表 仮出獄事件の審理期間(昭和33〜37年)

 次に,昭和三七年の仮出獄決定の状況を罪名別にみると,III-69表のとおり,特別法犯の棄却,不許可率は二三・六%で,刑法犯の一一・七%に比べると著しく高率である。刑法犯で棄却,不許可率の高いのは,強盗強かんの二二六%,脅迫の二〇・五%,住居侵入の二〇・〇%をはじめとし,わいせつ,殺人,強盗致死傷,放火の順となり,逆に棄却,不許可の低いものは,横領の五%,偽造の六・六%をはじめとして,強かん,傷害致死,賍物,単純強盗,窃盗の順となっている。概して,粗暴凶悪犯に対しては,棄却,不許可率は高く,財産犯のそれは低い。なお,特別法犯が刑法犯に比し,棄却,不許可率が著しく高く,その中でも道交違反の三六・二%,麻薬取締法違反の二七・四%が特に高いが,その理由は,道交違反者については,一般に刑期が短い上に,違反歴の多い者が多く,社会感情が相当考慮されていることによると思われ,麻薬取締法違反者については,再犯の危険率が高いことなどから,おのずから慎重にならざるを得ないことによると思われる。

III-69表 罪名(行為)別仮出獄決定ならびに仮出獄取消状況(昭和37年)

 これを年齢別に二三才以上と二三才未満に区分してみると,III-70表のとおり,二三才以上の者が,二三才未満の者より棄却,不許可の率が高く,累年漸増の度も大きい。

III-70表 年齢別仮出獄決定状況(昭和33〜37年)

(二) 仮出獄処分の当否

 仮出獄処分の当否を判断するには,通常仮出獄取消の有無が,一応判定の資料とされている。しかし,毎年の仮出獄者の全員について,その仮出獄取消の有無を調査することは,きわめて困難である。そこで,必ずしも適当な方法とはいえないけれども,従来行なわれている,毎年の仮出獄の許可人員とその年の仮出獄取消人員とを比較する方法によって,仮出獄取消率をみれば,III-71表のとおりである。取消率は,五年間を通じて,四ないし五%にとどまっていて,低率ということができよう。しかし,仮出獄期間中に犯罪を犯しても,なかには,仮出獄取消の手続がとられないうちに,仮出獄期間の経過等の事情により,仮出獄が取り消されるまでにいたらないものもあるから,取消率がそのまま再犯率を示すものということはできない。

III-71表 仮出獄許可人員,取消人貝とその率(昭和33〜37年)

 なお,この取消率を罪名別,年齢別に,前にのべた仮出獄の棄却,不許可率と対比してみれば,III-69表III-72表のとおり,罪名では,棄却,不許可率の高い住居侵入,強盗強かん,強盗致死傷,単純強盗が取消率も高く,年齢では,逆に,棄却不許可率の低い二三才未満が,二三才以上の約二倍もあることは注目に値する。

III-72表 年齢別仮出獄許可人員,取消人員とその率(昭和33〜37年)

 いずれにしても,仮出獄処分の当否の判断においては,さらにいっそうの検討を要するものがあるといえよう。