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 平成16年版 犯罪白書 第5編/第5章/第1節/2 

2 成人に対する保護観察の種類

 我が国における保護観察は,少年(保護観察処分少年及び少年院仮退院者)に対するものと成人に対するものとに分けられる。成人に対する保護観察には,[1]仮出獄者に対するもの,[2]保護観察付き執行猶予者に対するもの,[3]婦人補導院仮退院者に対するものがあり,[1]は犯罪者予防更生法,[2]は執行猶予者保護観察法,[3]は売春防止法と,それぞれ異なる法律に根拠を置いている。このうち[3]は,最近20年間その例がないので,本特集においては取り上げない。

(1) 仮出獄者

 仮出獄者に対する保護観察は,対象者が行刑施設を仮出獄した日から始まる。仮出獄者は,保護観察所に出頭して保護観察への導入手続を受けるとともに,指定された帰住地に帰らなければならない。その後は,保護観察官又は保護司と定期的に面接し,生活状況を報告しながら指導・助言を受けていく。受刑中に環境調整を担当した保護司が,そのまま保護観察の担当者となる場合が多く,保護司と引受人との協力関係があらかじめできていることが多い。
 保護観察中の遵守事項には,すべての者が守らなければならない法定の一般遵守事項と,犯罪者予防更生法に基づき,個々の事案ごとに地方更生保護委員会が定める特別遵守事項とがある。
 一般遵守事項としては,「一定の住居に居住し,正業に従事すること」,「善行を保持すること」,「犯罪性のある者又は素行不良の者と交際しないこと」,「住居を転じ,又は長期の旅行をするときは,あらかじめ,保護観察を行う者の許可を求めること」の四つが定められている。
 特別遵守事項としては,例えば,「他人の物に手を出さないこと」,「覚せい剤などの薬物に手を出さないこと」,「暴力団関係者と交際しないこと」,「早期に就職し,粘り強く働くこと」,「毎月保護司と面接し,その指導を受けること」,「更生保護施設の規則を守り,無断外泊や無断退所をしないこと」といった事項が,複数設定されることが多い。
 対象者が遵守事項を守り,保護観察をきちんと受けながら生活を送れば,残刑期間の満了とともに保護観察は終了し,刑の執行も終了する。ただし,無期刑仮出獄者には残刑期間という概念がないため,恩赦(大赦,特赦,減刑又は刑の執行の免除)とならない限り,終生保護観察を受けることとなる。
 仮出獄中に再犯や遵守事項違反があった場合,地方更生保護委員会は仮出獄を取り消すことができ,その場合,仮出獄中の期間は刑期に算入しないこととされているので,仮出獄の期間の全部について服役しなければならない。

(2) 保護観察付き執行猶予者

 保護観察付き執行猶予者に対する保護観察は,裁判所の判決が確定した日から始まり,執行猶予期間が満了するまで行われる。
 仮出獄者と異なるのは,特別遵守事項がなく,法定の一般遵守事項のみであることであり,さらに,その内容も,一定の住居を定め,その地を管轄する保護観察所の長にこれを届け出るほか,保護観察の期間中,[1]善行を保持し,また,[2]住居を移転し,又は1か月以上の旅行をするときは,あらかじめ保護観察所の長に届け出ることとされていて,仮出獄者よりも緩和されている。
 保護観察の成績が長期間良好な状態で推移した場合などには,仮解除の措置が執られる。仮解除中も,保護観察に付された身分には変わりがなく,転居・旅行の届出,善行保持の義務も継続するが,指導監督及び補導援護のための措置は行われなくなる。
 保護観察中に更に罪を犯して実刑に処せられたり,情状の重い遵守事項違反があった場合には,刑の執行猶予の言渡しが取り消され,服役しなければならない。これに対し,取消しのないまま,執行猶予期間が無事に満了したときは,刑の言渡しの効力は失われる。