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 平成16年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/1 

第3節 受刑者の処遇

1 処遇の基本制度

 行刑施設における受刑者処遇の基調は,刑の執行を通じて矯正処遇を行い,受刑者の改善更生及び社会復帰を図ることに置かれている。受刑者処遇の基本制度として,個々の受刑者の持つ問題点を明らかにするための科学的調査の結果に基づいて集団を編成し,各集団に応じた有効な処遇を行う分類処遇制度,及び刑の執行の過程に四つの段階(第1級ないし第4級)を設け,入所当初の最下級(第4級)から,その行刑成績に応じて順次上級に進級させる累進処遇制度がある。また,受刑者の資質に応じて開放的処遇も実施されている。
 行刑施設における受刑者処遇の流れを示したものが2-4-3-1図である。

2-4-3-1図 受刑者処遇の流れ

(1) 分類処遇制度

 受刑者を矯正し,円滑に社会復帰させるという受刑者処遇の目的を達成するためには,個々の受刑者の資質や人格等を科学的に診断して,罪を犯すに至った原因を究明し,各受刑者の特性に応じた処遇を行う必要がある。個々の受刑者の問題点を明らかにするための科学的調査を分類調査といい,その結果に基づいて処遇計画を立てた上,この計画を効果的に実施するための集団を編成し,各集団に応じた有効な処遇を行うことが分類処遇である。
 分類調査は,各行刑施設において,医学,心理学,教育学,社会学その他の専門的知識及び技術に基づいて,入所時調査(刑の確定による収容後おおむね2月以内に行う調査)及び再調査(入所時調査後,執行刑期が8月未満の者についてはおおむね2月ごとに,その他の者についてはおおむね6月ごとに定期的に行う調査,又は必要の都度臨時に行う調査)が行われている。分類調査の結果は,分類級(収容分類級及び処遇分類級)の決定,居房配置の決定,保安,作業,教育その他の処遇指針の決定,累進処遇審査,仮釈放申請審査など,適切な収容及び処遇を実施するための資料として活用されている。
 分類処遇体制を充実させる施策の一環として,各矯正管区ごとに分類センターとしての機能を営む施設(札幌,宮城,名古屋,大阪,広島,高松及び福岡の各刑務所並びに川越少年刑務所)が指定されている。分類センターでは,新たに刑が確定した受刑者で,[1]16歳未満の受刑者のうち,執行刑期が3月以上の者,及び[2]16歳以上28歳未満の男子のうち,執行刑期が1年以上で,かつ,施設において刑の執行を受けたことのない者(F級に分類されることが明らかな者を除く。)について精密な調査を行うこととなっている(1)については川越少年刑務所に収容する。)。
 分類調査の結果に基づいて,収容分類級(収容すべき施設又は施設内の区画を区別する基準となる分類級)及び処遇分類級(処遇の重点方針を区別する基準となる分類級)が決定され,収容する施設が決定される。
 平成15年12月31日現在における受刑者の収容分類級別人員は,2-4-3-2表のとおりである。
 また,平成15年12月31日現在における受刑者の処遇分類級別人員及びその構成比は,2-4-3-3表のとおりである。生活指導を必要とするG級の占める割合が6割を超えているが,この傾向は近年変化していない。

2-4-3-2表 受刑者の収容分類級別人員

2-4-3-3表 受刑者の処遇分類級別人員

(2) 累進処遇制度

 累進処遇は,刑の執行の過程に四つの段階(第1級ないし第4級)を設け,受刑者の行刑成績によって入所当初の最下級(第4級)から,順次上級に進級させ,それとともに漸進的に外部交通などに関する優遇と責任の付与を行う制度である。
 累進処遇制度の目的は,受刑者の意欲に基づいた更生に向けての努力を促し,徐々に社会生活に適応させていくことにある。

(3) 開放的処遇

 開放的処遇は,拘禁を確保するための施錠などの物理的な設備及び職員による監視に代えて,受刑者自身の責任と自律行動規制によって規律を確保するとともに,可能な限り一般社会生活に近似した環境の中で,社会復帰のための有効な処遇を実施するものであり,その基礎には受刑者の自律心及び責任感に対する信頼がある。この処遇は,主に交通事犯受刑者を収容する行刑施設で実施されている。また,開放的処遇は構外作業の発展形態としても行われており,この種のものとして,鱒川農場(函館少年刑務所付設),大井造船作業場(松山刑務所付設)等がある。
 開放的処遇を行う施設では,居房,食堂,工場等は原則として施錠しないなどの比較的開放的な環境の中で,生活指導,職業訓練等の社会復帰に必要な教育的処遇を実施している。