前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成15年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/3 

3 教育活動

 行刑施設における教育活動は,刑執行開始時の指導及び訓練,釈放前の指導及び援助,教科教育,通信教育,生活指導から成り立っており,施設内にとどまらず,施設外においても実施され,受刑者の改善更生を図り,社会復帰させる上で重要な役割を果たしている。
 2―4―3―4表は,平成14年における施設外教育活動の実施状況を見たものである。

2―4―3―4表 施設外教育活動実施状況

(1) 刑執行開始時の指導及び訓練

 刑執行開始時の指導及び訓練の期間は,おおむね14日間であり,新たに行刑施設に入所した者に対し,その心情を安定させ,改善更生の意欲の喚起を図りつつ,施設内における生活及び行動の在り方並びに処遇の内容を理解させる目的で,受刑の意義,処遇の目的,処遇制度,処遇の内容等に関する指導及び集団処遇に必要な諸訓練が行われる。

(2) 教科教育

 教科教育は,義務教育未修了者及び修了はしたが学力の低い者に対し,国語,数学,社会その他の必要な科目の履修又は補習を行うものである。特に松本少年刑務所は,地元中学校の分校を設け,全国の義務教育未修了の受刑者のうちから適格者を集めて教育を行っており,平成15年3月には6人の修了者に対し卒業証書が授与されている(法務省矯正局の資料による。)。また,盛岡,松本及び奈良の各少年刑務所において,地元県立高校の協力を得て,高校の通信制課程を受講させているほか,川越少年刑務所等数か所の刑務所においては,意欲のある受刑者に大学入学資格検定の受検指導を行い,受検の便宜も図っている。
 平成14年中の教科教育実施人員は,4,192人であり,その教育程度別内訳は,義務教育未修了者692人,義務教育修了のみの者2,038人,高校中退者572人,同卒業者553人等となっている(法務省矯正局の資料による。)。

(3) 通信教育

 通信教育は,受刑者の一般教養,職業的知識,技術等の向上を図ることを目的として行われているが,受講者には,受講に要する費用を国が負担する公費生と,受講者自らが負担する私費生とがある。
 平成14年(会計年度)中の受講者は,3,100人で,その受講内容は,簿記,書道,ペン習字,英語,コンピュータ等である(法務省矯正局の資料による。)。

(4) 生活指導

 生活指導は,受刑者の自覚に訴え,規則正しい生活習慣及び勤労の精神を培い,共同生活を営む態度,習慣,知識等をかん養することを目的とし,受刑者の日常生活を通じて,集団活動,クラブ活動,各種集会等を行わせるとともに,講話,読書指導,個別又は集団によるカウンセリングを実施しているほか,犯罪の行動面や犯罪に至った要因に着目し,同じ類型に属する者を集団として編成した上で,講話,集団討議,グループカウンセリング等の指導(処遇類型別指導)を行っている。処遇類型別指導のうち,覚せい剤乱用防止教育は,ほぼ全施設において実施されており,そのほか酒害教育,暴力団離脱指導,交通事犯防止指導等も行われている。

(5) 釈放前の指導及び援助

 釈放前の受刑者に対して,釈放後の生活についての不安を解消し,将来の見通しを立て,社会生活への円滑な移行の実現を図り,改善更生の意欲を確実にすることができるように,釈放前の指導及び援助を個々の受刑者にふさわしい内容及び方法で計画的かつ組織的に実施している。
 釈放前の指導及び援助の期間は,仮釈放が見込まれている者は原則として2週間,刑期終了による釈放の日が近づいた者については原則として1週間とし,釈放後の日常生活に直ちに必要となる知識,保護観察制度その他更生保護に関する知識等を付与するほか,帰住及び生計に関し必要な事項について指導・援助している。その実施に当たっては,指導内容に応じて関係のある公私の団体及び民間の篤志家の協力を得ることに努めている。