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 平成14年版 犯罪白書 第4編/第2章/第6節/5 

5 各種の施策

(1) 分類処遇制度

 分類処遇は,科学的な知見に裏打ちされた一定の基準に基づき,保護観察対象者を処遇の難易度に応じてA・Bの2段階に分類し,問題が多く処遇が困難と予測されたA分類の者に対しては,保護観察官による直接的処遇等の各種処遇を積極的に行う制度である。4-2-6-4図は,平成元年以降のA分類率の推移を見たものである。少年院仮退院者には,保護観察処分少年に比べて,非行性の深度が進んでおり,かつ,複雑な問題を抱えている者が含まれているためA分類率が高く,元年以降,30%台で推移していたが,近年は若干低下傾向にあり,9年以降は,20%台後半で推移している。

4-2-6-4図 A分類率の推移

(2) 類型別処遇制度

 類型別処遇は,保護観察対象者のもつ問題性その他の特性を,犯罪・非行の態様,環境条件等により10区分に類型化した上,類型ごとに具体的な処遇指針を例示し,その特性に焦点を合わせた処遇を実施する制度であり,複数の類型に該当する保護観察対象者に対しては,複数の区分に類型化し,処遇を実施している。少年に関連する類型の種類には,無職等少年,中学在学,暴走族,シンナー等乱用,校内暴力等があり,例えば無職等少年に対しては,カウンセリング等を通じて現在の無職状態や生活状況について内省を深めさせた上,就職に関する情報を提供し,就労開始後は,その実績を評価,激励して,就労期間を徐々に長期化させていくなどの処遇がなされている。4-2-6-5表は,保護観察処分少年及び少年院仮退院者について,平成13年12月31日現在における類型別処遇の主な類型に該当している者の比率を見たものである。

4-2-6-5表 保護観察処分少年及び少年院仮退院者の類型別該当率

(3) 交通短期保護観察

 交通短期保護観察制度は,交通関係の非行性が固定化していない少年に対して,安全運転等に関する集団処遇を行うとともに,毎月1回,自己の生活状況を書面で報告させ,車両の運転による再犯がなければ,原則として3月以上4月以内の短期間に保護観察を解除するものである。
 4-2-6-6表は,最近5年間における交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員と集団処遇の実施状況を示したものである。

4-2-6-6表 交通短期保護観察少年の新規受理・終了人員及び集団処遇実施状況

(4) 短期保護観察

 短期保護観察は,交通関係業過や道路交通法違反以外の犯罪により保護観察処分に付された少年のうち,非行性の進度がそれほど深くなく,短期間の保護観察によって改善更生が期待できる者を対象とするものである。この制度は,おおむね6月以上7月以内を実施期間として,生活習慣,学校生活,就労関係,家族関係,友人関係等の指導領域から少年の更生にとって特に重要な領域を選び,これに対応する一定の課題を与えた上で重点的な処遇を行うとともに,少年から定期的に生活状況を報告させることを中心として実施されている。
 平成13年における短期保護観察少年の新規受理人員は4,676人であり,交通短期保護観察少年を除く保護観察処分少年に占める比率は18.8%となっている(保護統計年報による。)。

(5) 社会参加活動

 社会参加活動は,保護観察対象者を老人ホームでの介護補助や公園での清掃活動等の奉仕活動を中心とする諸活動に参加させるものである。主として保護観察処分少年を対象に実施されており,短期保護観察少年に対する課題の一つとして実施されることも多い。平成13年度においては,全国で506回(前年度631回)実施され,1,578人(同1,777人)が参加している(法務省保護局の資料による。)。