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 平成14年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/2 

2 刑務作業

(1) 概況

 刑務作業は,受刑者の改善更生及び社会復帰を図るための重要な処遇の一つであり,受刑者の労働意欲のかん養,職業的知識及び技能の習得,忍耐力・集中力の養成を図ることなどを目的として行われている。刑務作業の形態は,その性質・目的から,生産作業,職業訓練及び自営作業(炊事,洗濯,清掃等の施設の自営に必要な作業と施設の改修等の直営工事に必要な作業がある。)に分かれており,生産作業の業種は,木工,印刷,洋裁,金属等7業種に及び,受刑者の適性等に応じ,それぞれの職種に指定している。また,構外作業も実施されており,刑務所が管理する構外作業場において行われるほか,民間企業の協力を得て,一般事業所においても実施されている。実施の態様としては,作業場に泊まり込んで行う「泊込作業」と施設から作業場へ通勤して行う「通役作業」とがある。作業の内容は,主として農耕・牧畜,木工,金属,造船等である。
 刑務作業は,刑法上所定の作業を行うことが義務とされている懲役受刑者及び労役場留置者を中心として実施されているが,このほか,刑法上所定の作業を行うことが義務とされていない禁錮受刑者,未決拘禁者等が希望して行う請願作業も刑務作業として実施されている。平成14年3月31日現在における請願作業に就業している者の比率は,禁錮受刑者では89.3%,未決拘禁者では10.7%となっている(法務省矯正局の資料による。)。

(2) 就業条件

 就業者の作業時間は,1日につき8時間,1週間につき40時間であり,原則として土曜日,日曜日及び祝日が休日となっているほか,作業環境や作業の安全及び衛生については,労働基準法,労働安全衛生法等の趣旨に沿ってその整備が図られている。
 平成13年(会計年度)における刑務作業の一日平均就業人員は約5万300人,刑務作業による歳入額は,約92億円である(法務省矯正局の資料による。)。
 刑務作業の収入は,すべて国の収入となるが,作業に従事した者に対しては,作業賞与金が支給される。作業賞与金は,就労の対価としての賃金ではなく,恩恵的・奨励的な性格のもので,原則として釈放時に支給される。平成13年(会計年度)の一人1か月の平均作業賞与金計算高(予算高)は,4,215円となっている(法務省矯正局の資料による。)。
 なお,受刑者には一定の条件の下で,余暇時間内に自己の収入となる自己労作が許されており,平成14年3月31日現在,95人が自己労作に従事し,一人1か月平均5,297円の収入を得ている(法務省矯正局の資料による。)。

(3) 職業訓練

 職業訓練は,受刑者に対し,職業に必要な技能を修得させ,又は既に修得した技能を向上させることを目的として,総合訓練,集合訓練及び自所訓練の三つの類型で,公の資格若しくは免許の取得又は高度な技能の付与を目指す専門訓練及び円滑な社会復帰を助けるための職業的技能の付与を目指す標準訓練が実施されている。
 職業訓練種目は,溶接,電気工事,自動車整備,建築,製版・印刷,木材工芸,建設機械,介護サービス等の53種目が実施され,平成13年(会計年度)の職業訓練終了人員は1,671人であった。同じく,溶接技能者,電気工事士,ボイラー技士等の資格又は免許を取得した者は,総数で1,657人となっている(法務省矯正局の資料による。)。