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 平成13年版 犯罪白書 第1編/第1章/第4節/1 

第4節 選挙犯罪

1 選挙犯罪の動向

 I-14図は,最近10年間における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。

I-14図 公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移

 公職選挙法違反は,各年における選挙の有無や種類によって受理人員に大きな変動があり,平成3年,5年,7年及び11年の各受理人員が突出しているのは,3年4月,7年4月及び11年4月に統一地方選挙が,5年7月に衆議院議院総選挙が,それぞれ行われたことによる。6月に衆議院議員総選挙が行われた12年の受理人員は,2,200人であり,前回の衆議院議員総選挙が行われた8年の3,190人を下回っている。
 警察庁の統計によって,平成12年の公職選挙法違反につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,買収・利害誘導が圧倒的に多く,次いで,文書図画に関する制限違反,戸別訪問となっている。
 買収・利害誘導は,選挙の公正を害する度合いが極めて強いことから,公職選挙法上も種々の規制が加えられている。公職選挙法は,昭和25年の施行以後,57年には参議院議員選挙について,平成6年には衆議院議員選挙について,それぞれ比例代表選出制度が導入されるなど,大きな制度的変更が加えられたほか,買収・利害誘導に対する規制としても,昭和29年,37年,56年及び平成6年には連座制の強化が,昭和50年と平成6年には罰金刑の上限の額の引上げ等がそれぞれ行われている。
 I-15図は,前記の法改正の時期をも図示しつつ,公職選挙法が施行されてから平成12年までに施行された全国的規模の選挙(衆議院議員総選挙,参議院議員通常選挙及び統一地方選挙)について,選挙の種類別に,投票日後3か月又は90日の時点における当該選挙に係る買収・利害誘導による送致人員の推移を見たものである。

I-15図 全国的規模の選挙における買収・利益誘導による送致人員の推移と公職選挙法の改正

 いずれの選挙においても,買収・利害誘導による送致人員は,昭和40年代以降顕著な減少傾向が見られるが,最も送致人員が多い統一地方選挙に係るもの以外については,その後も,規制強化に係る各法改正の時期の直後を含め,短期的には増減を繰り返している。しかし,平成6年12月に,衆議院議員選挙における比例代表選出制度の導入,連座制の強化及び罰金刑の上限の額の引上げに係る法改正が同時に施行された後においては,いずれの選挙も2回ずつ行われているが,買収・利害誘導による送致人員は減少を続けている。