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 平成13年版 犯罪白書  

はしがき

 我が国は,諸外国の犯罪統計と比較しても,これまで治安の良好な地域に属していたが,近年に至り,犯罪の認知件数が激増し,治安の悪化が憂慮される事態になってきた。
 治安の良し悪しは,国民の受け止め方もさることながら,その前提としては,犯罪情勢を数量,罪質の両面から客観的に分析し,これに基づいた冷静な判断をすることが必要である。
 そこで,本白書では,平成12年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観するとともに,特集として「増加する犯罪と犯罪者」を取り上げ,その特徴を分析・検討した。その結果,[1]戦後最高を更新した刑法犯の認知件数は平成7年から加速度的に増加していること,[2]顕著に増加が認められるのは窃盗罪と交通犯罪であること,[3]少年非行の検挙人員はやや減少したが高水準を維持していること,[4]窃盗では,ひったくり等の暴力的手段を用いた事犯の増加,職業犯的な空き巣ねらい等の侵入盗の増加,共犯事犯の増加などが目立つこと,[5]窃盗を除く一般刑法犯でも,暴力的色彩の強い強盗,傷害,強制わいせつ,器物損壊の増加が顕著であること,[6]薬物犯罪は大型化・組織化が進んでいること,[7]外国人犯罪は総数では減少したものの,強盗や薬物犯罪などの悪質事犯は減少せず,外国人新受刑者は4年連続で上昇していること,その反面,[8]検挙件数が増加する中で,検挙率は,全体で42.7%と戦後最低を更新し,窃盗の検挙率は20%を切る事態であること,[9]矯正施設は収容率が100%を超え,過剰収容時代となったことなどが判明した。
 これらの分析・検討が,犯罪の防止及び犯罪者処遇に関する刑事政策的施策を有効適切に講ずる上で多少なりとも寄与することができれば幸いである。
 なお,最近の公文書のA4判化という流れに沿い,21世紀最初の本白書からA4判化することとし,併せて,記述方式も読みやすく分かりやすいものとなるように努めたつもりではあるが,なお不十分な点も多いと思われるので,皆様のご叱正をいただきながら,今後更に工夫を重ねたいと考えている。
 終わりに,本白書作成に当たり,最高裁判所事務総局,警察庁,外務省,厚生労働省その他の関係機関から多大の御協力をいただいたことに対して,改めて謝意を表する次第である。
平成13年11月
坂井 一郎 法務総合研究所長