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 平成11年版 犯罪白書 第5編/第2章/第2節/5 

5 被害者に対する情報提供

 刑事事件の公判期における審理は公開の法廷で行われ,被害者は,これを傍聴することができるほか,事件処理結果等が被害者に通知されることや,刑事確定訴訟記録が公開されること等により,被害者に対する情報提供が行われている。
 (1)告訴人通知及び被害者等通知制度
 検察官は,告訴のあった事件について,公訴を提起し,又はこれを提起しない処分をしたときは,速やかにその旨を告訴人に通知しなければならず,不起訴処分をした場合において,告訴人の請求があるときは,速やかにその理由を告げなければならないとされている。
 さらに,犯罪被害者等の一定の者に対し,公訴を提起したことや裁判結果等を通知する被害者通知制度が,平成3年以降各地の検察庁に導入されるようになり,11年4月からは,全国的に統一された被害者等通知制度が実施されるに至っている。同制度では,被害者が死亡した事件又はこれに準ずる重大な事件や検察官等が被害者等の取調べ等を実施した事件において,被害者等に対して通知の希望の有無を確認し,被害者等が通知を希望する場合,あるいは被害者等から照会があった場合等に通知を行うものとされている。通知の内容は,事件処理結果,公判期日及び判決結果等であり,被害者等が特に希望する場合には,公訴事実の要旨,不起訴理由の骨子,公判経過等を通知することができる。
 なお,警察においても,平成8年7月から,殺人事件等の被害者等に対し,捜査状況等を連絡する「被害者連絡制度」が実施されている。また,少年法の一部を改正する法律案が,11年3月,国会に提出されたが,同法律案には,家庭裁判所が,少年審判事件を終結させる決定をした場合において,当該事件の被害者等から申出があるときは,少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でない場合を除いて,少年及びその法定代理人の氏名及び住居,決定の内容等を通知すること等を内容とする規定が置かれている。
 (2)刑事確定訴訟記録の公開
 刑事確定記録については,原則として閲覧することができるとされている。最近3年間における刑事確定記録の閲覧請求に対する許可率は99%を超えている。
 一方,不起訴記録については原則として非公開とされているが,交通関係業過事件の実況見分調書については,当該事件に関連する民事訴訟が係属している裁判所からの送付嘱託に応じているほか,弁護士会からの照会,財団法人交通事故紛争処理センター等の団体からの請求にも応じて,閲覧・謄写を認めている。また,裁判所からの送付嘱託に対して,個々の事案ごとに,代替性の有無,捜査及び刑事裁判への影響等を十分に考慮した上で,写真撮影報告書,鑑定書,被疑者の供述調書等の送付に応じた例もある。