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 平成11年版 犯罪白書 第2編/第6章/第4節/1 

第4節 捜査・司法に関する国際共助

1 捜査共助等

 (1)我が国から外国に対する捜査共助等の要請
 我が国の刑事事件の捜査(公判における補充捜査を含む。)に必要な証拠の収集について外国に共助を求める場合,検察庁又は警察等が外交ルートを通じてこれを行っている。
 通常,検察庁の依頼によって共助の要請をする場合は,「検察庁→法務省→外務省→在外日本公館→相手国の外務省」,警察の依頼による場合には,「都道府県警察→警察庁→外務省→在外日本公館→相手国の外務省」という経路をたどり,それぞれ,当該国の司法当局等がこれを実施することとなる。
 また,外国等に対して,刑事事件の捜査に必要な情報や資料の提供等の協力を求める方法としては,国際刑事警察機構(ICPO)ルートによる方法もある。この場合は,一般に,各都道府県警察の協力の依頼が,ICPOの我が国における国家中央事務局である警察庁を通じて,ICPOに加盟している外国の警察に伝達され,当該警察において処理されることとなる。
 II-27図により,最近10年間において,検察庁の依頼により我が国から外国に対して,外交ルートによって要請した捜査共助について見ると,平成元年には6件であった嘱託件数が,5年以降は10件を超え,10年には19件となっている。この10年間の嘱託件数は合計で125件,相手国(地域を含む。)は23か国となっており,嘱託件数,相手国数共に,おおむね増加する傾向にある。相手国はアメリカが最も多く,総数125件中の45件と3分の1以上を占めているが,近年,タイ,韓国,フィリピン等のアジア諸国を相手国とするものも増加している(巻末資料II-14参照)。
 平成10年中に,検察庁の依頼により我が国から捜査共助の要請をした相手国は,アメリカ,エクアドル,カナダ,韓国,スイス,タイ,中国(香港),バハマ,フィリピン,ブラジル,フランス及び連合王国の12か国となっており,証拠物の提供,関係者の供述調書の作成及び証人尋問の実施の依頼等合計19件の捜査共助の要請をし,このうち8件については回答を受けている。検察庁の依頼による我が国からの捜査共助の嘱託事件のうち,外国人被疑者に係る事件について,この10年間における嘱託件数を見ると,合計35件となっており,10年においては5件となっている(法務省刑事局の資料による。)。
 なお,このほか,警察の依頼により我が国から外国に対して,外交ルートにより行った捜査共助の要請を最近3年間について見ると,平成8年7件,9年14件,10年12件となっている(警察庁長官官房国際部の資料による。)。
 (2)外国から我が国に対する捜査共助等の要請
 外国の刑事事件の捜査に必要な証拠の提供等について我が国が外国等から協力を求められた場合の手続等に関しては,国際捜査共助法(昭和55年法律第69号)に規定が設けられている。同法には,外国から証拠の提供の要請を受けた場合とICPOから協力の要請を受けた場合について,それぞれの手続が定められている。
 II-27図により,最近10年間における,外交ルートによる外国から我が国に対する捜査共助要請の受託状況について見ると,受託件数は,合計で202件,要請国は28か国となっている。要請国はアメリカが最も多く,202件中の93件と約半数を占めている。しかし,近年,オーストラリア,中国,ロシア等のアジア・太平洋諸国等からの要請が増加している(巻末資料II-15参照)。

II-27図 捜査共助件数の推移

 平成10年中には,アメリカ,イタリア,インドネシア,シンガポール,中国,南アフリカ共和国,連合王国及びロシアから,証拠物の提供,関係者の供述調書の作成及び証人尋問の実施の依頼等合計16件の捜査共助の要請を受けており,このうち15件については,既に捜査共助を実施し,要請国に回答済みである。
 我が国が受託した外国からの捜査共助要請について,法務大臣による関係書類送付件数を送付先別に見ると,平成10年においては,送付先を警察庁とするものが10件,検察庁とするものが12件,海上保安庁とするものが1件であった(巻末資料II-16参照)。