前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 8年版 犯罪白書 第3編/第9章/第2節/3 

3 科刑状況等

 凶悪事犯の科刑状況はIII-83表のとおりである。
 殺人の罪のうち,謀殺に対する刑罰は無期刑のみである。故殺,嬰児殺及び強盗の最高刑は無期刑である。

III-83表 殺人及び強盗の科刑状況イギリス(1994年)

 謀殺に対する死刑が廃止された1965年前後の殺人認知件数の状況は,III‐54図のとおりである。
 謀殺に対する無期刑にも仮釈放が可能であるが,裁判官は,無期刑の宣告に当たり,刑務所拘禁の最低期間(通常tariffといわれる。)について意見を述べることができる。しかし,内務大臣は司法からの意見に拘束されることなく,拘禁の最低期間を決定する。

III-54図 殺人の認知件数の推移 イギリス(1946年〜1994年)

 なお,18歳以上21歳未満の謀殺犯罪者には,1982年「刑事裁判法」(Criminal Justice Act 1982)8条2項により,原則として仮釈放がある無期拘禁(custodyforlife)が科される。18歳未満の謀殺犯罪者については,1933年「青少年法」(Children and Young Person s Act 1933)53条1項により,不定期の拘禁(detention during Her Majesty s pleasure)が宣告される。
 1994年6月30日現在,刑務所に収容きれている受刑者の人員は3万5,763人である。これには3,192人の無期刑受刑者が含まれ,そのうち82%(2,618人)は謀殺事犯受刑者である。1994年における無期刑受刑者の入所人員は222人である。18歳以上の無期刑受刑者は刑務所に収容されるが,18歳に満たない者は青少年刑務所(young offender institution)又は地方の拘禁施設に収容される。
 凶悪事犯受刑者の収容状況はIII-84表のとおりである。
 なお,1994年に釈放された謀殺事犯無期刑受刑者75人の平均在所期間は15.5年であり,1991年,1992年及び1993年のそれぞれ,11.9年,12.4年及び14.5年と比べ長期化の傾向が認められる。

III-84表 殺人及び強盗事犯受刑者の収容人員 イギリス(1985年〜1994年各6月30日現在)