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 平成 8年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/1 

第2節 犯罪者の国外逃亡と逃亡犯罪人の引渡し

1 犯罪者の国外逃亡

 警察庁刑事局の資料により,日本国内で犯罪を犯して国外に逃亡した被疑者の状況について見ると,次のとおりである。
 国外逃亡被疑者の数について,最近10年間の推移を見たのがII-58図である。国外逃亡被疑者数は,近年,増加の傾向を強めており,平成7年には349人となり,前年と比べ41人(13.3%)増加した。その主な要因は,中国人26人を含むアジア州の国籍(地域を含む。以下,本章において同じ。)の者の純増(37人,20%)にある。7年の国外逃亡被疑者合計349人を国籍別に見ると,日本が79人(総数の22.6%)で最も多い。外国籍(無国籍・国籍不明を含む。)270人中では,日本以外のアジア州の国籍の者が合計220人,南北アメリカ州の国籍の者が合計38人,ヨーロッパ州の国籍の者が合計1人等となっている。

II-58図 国外逃亡被疑者数の推移(昭和61年〜平成7年)

 平成7年の国外逃亡被疑者を罪種別に見ると,刑法犯の被疑者243人(うち,日本国籍51人)の内訳は,凶悪犯(ここでは,殺人・強盗・放火及び強姦をいう。)が107人(同6人)で最も多く,窃盗犯が68人(同9人),知能犯(ここでは,詐欺・横領・偽造・贈収賄及び背任をいう。)が43人(同30人),粗暴犯(ここでは,暴行・傷害・脅迫・恐喝及び凶器準備集合をいう。)が10人(同1人)等となっている。また,特別法犯の被疑者106人の内訳は,薬物関係(ここでは,覚せい剤取締法違反・麻薬取締法違反及び大麻取締法違反をいう。)が73人(同13人)で最も多く,入管法違反が17人(同4人),銃刀法違反が9人(同7人)等となっている。
 平成7年の国外逃亡被疑者について,その推定逃亡先国(地域を含む。)を被疑者数の多い順に見ると,台湾36人(うち,日本国籍1人),フィリピン30人(同23人),中国23人(同0人),香港20人(同5人),アメリカ19人(同10人)等となっている。
 また,平成7年の国外逃亡被疑者349人のうち,出国年月日が判明している被疑者は147人(うち,日本国籍40人)である。この147人の出国日が,それぞれの犯行日から何日目であったかについて見ると,犯行当日が8人(同3人),犯行翌日が21人(同4人),2日後が9人(同2人)となっている。
 犯行後10日以内に国外に逃亡した被疑者が合計で62人(42.2%),犯行後30日以内に国外に逃亡した被疑者が合計で82人(55.8%)となっている。