前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 7年版 犯罪白書 第3編/第6章/第2節/2 

2 経済事犯

(1) 証券取引法違反及び独占禁止法違反
 最近5年間における,証券取引法違反及び独占禁止法違反の検察庁新規受理人員の推移は,III-41図のとおりである。
 証券取引法については,近時,罰則を含む同法の改正が相次いでいる。すなわち,昭和63年の改正においては,いわゆる「内部者取引」を規制する罰則が設けられ,平成2年の改正においては,株式の大量保有に関する情報の開示制度が創設され,3年の改正においては,損失補てん行為の処罰規定が整備された。また,4年の改正においては,独立した監視機構として新たに設置された証券取引等監視委員会に対して,国税犯則取締法に規定する調査権限に準じた調査・告発権限を付与すること,一定の違反行為についての両罰規定中,法人の罰金刑の上限を,行為者に対する罰金刑の上限の額とは切り離して定め,3億円又は1億円と大幅に引き上げることなどを主たる内容とする改正がなされた。さらに,6年の改正においては,商法の一部改正により自己株式取得規制が緩和されたことに伴って,自己株式取得に関する開示手続,公開買付け手続,内部者取引規制等につき,関連罰則を含む整備が行われた。

III-41図 証券取引法違反・独占禁止法違反の検察庁新規受理人員の推移(平成2年〜6年)

 近年における同法違反の検察庁新規受理人員は,平成5年まで一けた又は10人台にとどまっていたが,6年は39人に増加した。
 独占禁止法についても,近年,重要な改正がなされた。まず,平成3年の改正においては,価格に関係する不当な取引制限等を行った事業者等に対する課徴金の算定率が引き上げられ,4年の改正においては,罰則が強化され,事業者による「私的独占」又は「不当な取引制限」等についての両罰規定中,法人等に対する罰金刑の上限の額が,行為者に対する罰金刑の上限の額とは切り離して定められ,1億円に引き上げられた。
 一方,公正取引委員会は,平成2年6月,国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案及び違反を反復して行っている又は排除措置に従わない事業者等に係る違反行為のうち同委員会の行う行政処分によっては同法の目的が達成できないと考えられる事案について,積極的に刑事処罰を求めて告発を行へ旨の方針を決定した。
 最近10年間における同法違反の検察庁新規受理人員を見ると,昭和60年から平成元年までの5年間には合計でわずか2人であったが,2年から6年までの5年間には合計で27人となっている。
(2) その他の経済事犯
 最近5年間における,特許法,商標法及び著作権法各違反の検察庁新規受理人員の推移は,III-42図のとおりである。

III-42図 特許法違反・商標法違反・著作権法違反の検察庁新規受理人員の推移(平成2年〜6年)

 無体財産関係法令違反の中では,商標法違反と著作権法違反の新規受理人員が多い。商標法違反では,偽有名ブランド商品の販売事例が多数受理されており,著作権法違反では,アニメキャラクターの不正使用・販売事例やビデオソフトやコンビュータソフトの不正複製・販売事例等が見られる。
 その他の主な経済関係特別法犯の最近10年間における検察庁新規受理人員を見ると,出資法違反では,昭和62年以前は300人以上であったものが63年に183人に減少し,以後,平成3年まで100人台が続いていたところ,4年以降増加し,6年には334人となっている。これは,主として高金利事犯の増減によるものである。また,外為法違反では,昭和62年以前は40ないし80人台であったが,63年以降は毎年30人以下と新規受理人員が少なくなっている(巻末資料I-6表参照)。