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 平成 7年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 終局裁判

(1) 第一審
 最近10年間の地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所による,第一審における終局処理人員を手続別に見たものがII-9図であり,圧倒的多数が略式手続によっている。

II-9図 第一審における手続別終局処理人員(昭和59年〜平成5年)

 平成5年の地方裁判所及び家庭裁判所による第一審における終局処理人員を,罪名別・終局処分別に見たものが,II-4表である。
 地方裁判所における終局処理人員は,前年より1,723人(3.7%)増加して4万8,236人となっている。これを罪名別に見ると,覚せい剤取締法違反(地方裁判所の終局処理人員総数の23.2%)が最も多く,以下,道交違反(同13.0%),業過(同11.0%),窃盗(同10.1%),傷害(同6.5%),詐欺(同5.9%)の順となっている。
 家庭裁判所による第一審における少年の福祉を害する成人の刑事事件の終局処理人員は,前年より25人(9.4%)減少して240人となっている。そのうち,懲役言渡し人員124人中の112人(90.3%)は児童福祉法違反によるものであり,罰金・科料言渡し人員115人中の78人(67.8%)は労働基準法違反によるものである。

II-4表 罪名別地方・家庭裁判所終局処理人員

 平成5年の簡易裁判所による第一審における終局処理人員を,罪名別・終局区分別に見たものが,II-5表である。簡易裁判所における通常手続による終局処理人員は,前年より453人(4.9%)増加して9,679人となっており,懲役言渡し人員の95.0%が窃盗,罰金言渡し人員の56.5%が業過及び道交違反による返のである。また,略式手続によって罰金又は科料に処された者は,前年より2万6,706人(2.3%)減少して115万640人となっており,これを罪名別に見ると,道交違反(略式手続総数の88.3%)が最も多く,業過(同8.2%)がこれに次いでいる。

II-5表 罪名別簡易裁判所終局処理人員

(2) 上訴審
 平成5年に言い渡された第一審判決に対する控訴率を見ると,地方裁判所の判決に対しては9.3%,簡易裁判所の判決に対しては4.6%となっている。5年の高等裁判所の控訴受理人員は4,632人で,これを控訴申立当事者別に見ると,被告人側のみの申立てによるものは4,555人(98.3%),検察官のみの申立てによるものは68人(1.5%),双方からの申立てによるものは9人(0.2%)である(司法統計年報による。)。
 II-6表は,平成5年に高等裁判所が控訴審として処理した結果を,罪名別に見たものである。終局処理人員総数4,643人のうち控訴棄却が最も多く3,072人(66.2%),取下げは802人(17.3%),破棄自判は738人(15.9%)である。これを罪名別に見ると,取下げ率は,覚せい剤取締法違反(25.9%),窃盗(25.6%),詐欺(22.3%),暴力行為等処罰法違反(18.9%),銃刀法違反(17.8%)等が高く,破棄自判率は,業過(42.0%),強姦・強制わいせつ(32.1%),賭博・富くじ(22.2%),入管法違反(22.2%),詐欺(21.1%)等が高い。破棄理由を見ると,破棄人員総数752人中195人(25.9%)は量刑不当によるものであり,自判の結果,裁判が覆されて無罪となった者は5人(終局処理人員総数の0.1%)である。
 なお,検察統計年報によれば,検察官が第一審の無罪判決を不服として控訴した事件のうち,平成5年に21人の被告人に対し控訴審の裁判が行われているが,そのうち14人(66.7%)については,第一審判決が覆されて有罪となっている。
 平成5年に言い渡された控訴審の判決に対する上告率を見ると,全体では35.8%で,第一審判決に対する上訴率に比べると高くなっている。5年の最高裁判所の上告受理人員は1,220人であるが,検察官の申立てに係る者はない。5年に最高裁判所が上告審として終局処理した人員は,前年より15人(1.2%)増の1,251人で,その内訳は,上告取下げ262人(20.9%),上告棄却980人(78.3%),原判決破棄1人(0.1%)となっている(司法統計年報による。)。

II-6表 罪名別控訴審終局処理人員