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 平成 7年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2 

2 主要特別法犯の動向

 本項においては,特別法犯のうち,第3編において記述される交通関係,財政関係,経済関係の各特別法犯及び第4編において特集される薬物関係特別法犯を除く主要特別法犯について,その動向を見ることとする(巻末資料I-6表参照)。
(1) 保安関係
 I-11図は,最近10年間における保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。
 保安関係事犯は,平成元年までいずれも減少傾向にあったが,軽犯罪法違反,酩酊防止法違反は,3年以降毎年増加している。また,6年は,前年と比べ,銃刀法違反が277人(7.9%),火薬類取締法違反が20人(8.8%),軽犯罪法違反が1,205人(42.3%),酩酊防止法違反が79人(24.9%),それぞれ増加した。
 警察庁の統計によって,平成6年の保安関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,軽犯罪法違反では,はり札・標示物除去等,凶器携帯,窃視,田畑等侵入,侵入具携帯の順となっている。また,銃刀法違反では,刃物の携帯,けん銃等の不法所持,けん銃等の加重不法所持,けん銃等・猟銃以外の銃砲又は刀剣類の不法所持,模造刀剣類の携帯の順となっており,火薬類取締法違反では,所持,消費,貯蔵,譲渡し・譲受けの順となっている。

I-11図 保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和60年〜平成6年)

(2) 外事関係
 I-12図は,最近10年間における外登法違反及び入管法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。
 外国人の不法入国者及び不法残留者の急増に伴い,入管法違反が急激に増加している反面,外登法違反は著しく減少している。なお,平成6年は,前年と比べ,入管法違反が1,741人(29.4%),外登法違反が140人(66.0%),それぞれ増加した。
 警察庁の統計によって,6年の外事関係特別法犯につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,入管法違反では,不法残留,旅券不携帯等,不法就労助長,不法入国,資格外活動,不法上陸の順となっている。外登法違反では,新規登録不申請が多数を占めている。

I-12図 外事関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和60年〜平成6年)

(3) 風俗関係
 I-13図は,最近10年間における風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。風営適正化法違反,売春防止法違反及び児童福祉法違反は,共に減少傾向にある。もっとも,風営適正化法違反は,平成6年には前年と比べ195人(9.4%)増加した。一方,昭和62年まで減少していた公営競技取締法規違反(競馬法違反,自転車競技法違反及びモーターボート競走法違反をいう。)は,その後増加傾向にあったところ,平成6年は,競馬法違反が2,075人で前年と比べ134人(6.1%)の減少,自転車競技法違反が562人で前年と比べ89人(18.8%)の増加,モーターボート競走法違反が192人で前年と比べ38人(16.5%)の減少となっている。
 警察庁の統計によって,平成6年の風俗関係特別法犯につき,違反態様別に多いものから順に見ると,風営適正化法違反では,18歳未満の者を客に接する業務に従事させる行為,無許可営業,20歳未満の者に酒類又はたばこを提供する行為の順,売春防止法違反では,周旋等,勧誘等,売春をさせる契約,場所の提供の順,児童福祉法違反では,児童に淫行をさせる行為,児童に対し刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に児童を引き渡す行為等,児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって児童を支配下に置く行為の順となっている。

I-13図 風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和60年〜平成6年)

I-14図 環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和60年〜平成6年)

(4) 環境関係
 I-14図は,最近10年間における環境関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。廃棄物処理法違反は,平成4年まで減少していたが,5年に増加に転じ,6年は,前年と比べ274人(13.1%)増加した。水質汚濁防止法違反も,減少傾向にあったが,6年は,前年と比べ6人(10.3%)増加した。他方,海洋汚染防止法違反は引き続き減少傾向にあり,6年は,前年と比べ204人(19.7%)減少した。自然公園法違反も前年と比べ8人(33.3%)減少した。なお,大気汚染防止法違反は4年以降全く受理されていない。
 警察庁の統計によって,平成6年の環境関係特別法犯につき,公害被害の態様別に多いものから順に見ると,水質汚濁,土壌汚染,騒音,大気汚染の順となっている。
(5) 労働関係
 I-15図は,最近10年間における労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。平成6年は前年と比べ,労働安全衛生法違反が29人(1.6%),職業安定法違反が19人(7.6%),それぞれ増加した一方,労働基準法違反が22人(2.5%),労働者派遣法違反が75人(37.5%),船員法違反が65人(29.8%),それぞれ減少した。

I-15図 労働関係特別法犯の検察庁新規受理人員の推移(昭和60年〜平成6年)

I-16図 公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移(昭和60年〜平成6年)

(6) 選挙関係
 I-16図は,最近10年間における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。選挙関係事犯は,各年における選挙の有無・種類等によって受理人員に大きな変動があり,昭和59,61,62,平成2,3,5の各年の受理人員が多くなっている。受理人員の多い年を見ると,昭和61年7月にいわゆる衆参同時選挙が,62年4月と平成3年4月に統一地方選挙が,昭和58年12月,平成2年2月及び5年7月に衆議院議員総選挙がそれぞれ行われており,これらの選挙との関連が深いことが分かる。一方,元年7月と4年7月に施行された参議院議員通常選挙の年における受理人員は,いずれも少なくなっている。
 平成6年の受理人員は,前年と比べ6,631人(86.0%)の減少であった。
 警察庁の統計によって,平成6年の公職選挙法違反につき,違反態様別に送致人員の多いものから順に見ると,買収・利益誘導が圧倒的に多く,次いで,戸別訪問,運動期間の違反,文書図画に関する制限違反の順となっている。
(7) 条例違反
 I-17図は,最近10年間における条例違反の検察庁新規受理人員の推移を見たものである。平成6年における条例違反の検察庁新規受理人員総数は,3,752人(前年比312人,9.1%増)である。前年と比べると,青少年保護育成条例違反は168人(9.3%)増加し,公安条例違反は4人(28.6%)減少し,その他の条例違反は140人(8.7%)増加した。

I-17図 条例違反の検察庁新規受理人員の推移(昭和60年〜平成6年)