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1 少年鑑別所における鑑別 (1)概 説
少年鑑別所は,家庭裁判所が行う少年の調査及び審判並びにその後の保護処分の執行に役立てるため,医学,心理学,教育学,社会学等の専門知識に基づいて少年の資質の鑑別を行っている。この家庭裁判所関係の鑑別は,次のように区分される。 収容鑑別 家庭裁判所の観護措置の決定によって送致された少年の身柄を,原則として2週間,特に必要があるときは決定により更に2週間延長して最長4週間収容して行う鑑別 在宅鑑別 身柄を収容しないで行う鑑別 少年鑑別所新収容人員の推移を見ると,新収容人員は,II-31図及び巻末資料II-11表のとおり,昭和60年以降減少傾向を示している。 II-31図 少年鑑別所新収容人員の推移 過去3年における少年鑑別所退所事由別人員は,II-25表のとおりである。II-25表 少年鑑別所退所事由別人員 (2)鑑 別II-32図は,少年鑑別所における収容鑑別の対象少年に対する標準的な鑑別の流れを示したものである。 II-32図 少年鑑別所における収容鑑別対象少年の鑑別の流れ 収容鑑別のための調査は,主として鑑別のための面接,身体状況の調査,心理検査,精神医学的検査及び診察,行動観察並びに関係機関及び家族等からの資料(外部資料)の収集によって行われる。行動観察には,次の2種類がある。通常の行動観察 入所,居室内生活,運動,面会等の観察場面(収容中の通常の生活場面)において行動傾向等を観察する。 意図的行動観察 課題作文,はり絵,絵画,集団討議その他意図的に一定の条件を設定した観察場面において行動傾向等を観察する。 こうした調査の結果から得られた情報を判定会議において総合し,当該少年の資質の特質及びその問題点並びに少年を非行に走らせた要因及び再非行の危険性を明確にし,改善更生のための最適の処遇方針等を検討した上で,鑑別結果通知書が作成され,審判の資料として家庭裁判所へ提出される。また,鑑別の結果は,他の記録とともに少年簿に記録され,保護処分の決定がなされた場合,その処分の執行に資するため,少年院,保護観察所等へ送付される。 少年鑑別所では,上述の家庭裁判所関係の鑑別のほか,次のような鑑別も行い,少年処遇関係機関への共助を行うほか,広く一般市民の要望にこたえ,青少年の健全育成,非行防止等に寄与している。 法務省関係 検 察 庁 主として捜査段階における少年に対する簡易鑑定 少 年 院 主として処遇の過程において,問題等を改めて見直し,処遇計画の変更を考慮する必要がある少年に対する再鑑別 地方更生保護委員会・保護観察所 主として仮釈放の審理又は保護観察の実施のため必要がある少年に対する鑑別 一般少年鑑別 主として一般少年の教育,職業指導その他育成補導に関する方針の決定のため必要がある一般市民,公私の団体等から依頼された少年に対する鑑別 最近3年間における少年鑑別所の鑑別受付人員は,II-33図のとおりである。平成5年における鑑別受付人員総数は,前年と比べ5.8%減少して5万6,805人となっている。鑑別受付人員の内訳では,一般少年鑑別が49.5%で最も多く,家庭裁判所関係の収容鑑別がこれに次いでいるが,交通(主たる非行が自動車又は原動機付自転車の運転に係るものをいう。)に限って見ると,保護関係機関からの依頼鑑別が58.1%で最も多くなっている。5年における一般少年鑑別は,前年と比べ1.7%の減少となっている。 II-33図 鑑別受付人員 II-26表は,平成5年における家庭裁判所関係の収容鑑別のうち,鑑別判定を終了した少年について,鑑別判定と審判決定等との関係を見たものである。在宅保護相当と判定された者では,72.7%が保護観察に,15.1%が決定保留のまま家庭裁判所調査官の試験観察に,それぞれ付されている。また,少年院送致相当と判定された者では,54.2%が少年院に送致されているが,22.0%が保護観察に,18.4%が前記の試験観察に,それぞれ付されている。II-26表 鑑別判定と審判決定等との関係 II-34図は,平成5年に収容鑑別の対象となった少年について,男女別に年齢層と非行種別との関係を見たものである。男子では,財産犯が,いずれの年齢層においても30%台を占め,最も多く,以下,年少少年(14歳未満を含む。)では粗暴犯及び虞犯が,中間少年では道路交通法違反及び粗暴犯が,年長少年(20歳以上を含む。)では粗暴犯及び道路交通法違反が,それぞれ高率となっている。女子では,年少少年及び中間少年では虞犯が,年長少年では覚せい剤取締法違反が,それぞれ最も多く,以下,年少少年では財産犯及び粗暴犯が,中間少年では財産犯,粗暴犯及び毒劇法違反が,年長少年では財産犯及び毒劇法違反が,それぞれ高率となっている。II-34図 収容鑑別対象少年の男女・年齢層・非行種別別構成比 |