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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第5章/第4節/4 

4 収容鑑別対象少年の特性

 平成元年に収容鑑別の対象となった少年の特性については,本編第3章に詳述されているので,ここでは,基礎的なものを幾つか見ることとする。
(1) 非行名と男女別及び年齢層
 III-52図は,非行名と男女別との関係を見たものである。総数では,窃盗が34.3%と最も多く,以下,虞犯13.2%,道路交通法違反10.9%,傷害10.3%,毒物及び劇物取締法違反8.7%,恐喝4.9%,覚せい剤取締法違反3.9%などとなっている。男女別に見ると,構成比の高い非行名順に,男子では,窃盗,道路交通法違反,傷害,毒物及び劇物取締法違反,また,女子では,虞犯,窃盗,毒物及び劇物取締法違反,覚せい剤取締法違反となっており,男女で非行名の構成比に差があることがわかる。

III-52図 収容鑑別対象少年の男女・非行名別構成比(平成元年)

 III-77表により男女別,年齢層別に見ると,年長少年(本節では20歳以上の者を含む。)が43.8%で最も多く,次いで,中間少年が37.9%,年少少年(本節では14歳未満の者を含む。)18.3%の順であるが,男女別に見ると,男子では,年長少年と中間少年が,女子では中間少年と年少少年が多くなっている。
 非行名と年齢層との関係を男女別に見ると,男子では,いずれの年齢層においても窃盗が30%を超えており,次いで,年少少年では虞犯及び傷害が,中間少年では道路交通法違反が,年長少年では道路交通法違反及び傷害がそれぞれ高率である。女子では,年少及び中間少年において虞犯がそれぞれ69.6%と43.4%を占め,年長少年において覚せい剤取締法違反が34.0%を占あているほか,年少少年では窃盗並びに毒物及び劇物取締法違反の,中間少年では毒物及び劇物取締法違反,窃盗並びに覚せい剤取締法違反の,年長少年では窃盗,虞犯並びに毒物及び劇物取締法違反の占める各比率がそれぞれ高く,また,年齢が高くなうに従って虞犯の比率が大幅に下降する反面,窃盗の比率が少しずつ上昇し,さらに,覚せい剤取締法違反の比率が顕著に上昇している。

III-77表 収容鑑別対象少年の男女・年齢層・非行名別構成比(平成元年)

III-78表 収容鑑別対象少年の非行名・非行時の身上別構成比(平成元年)

III-79表 収容鑑別対象少年の非行種類・入所回数別構成比(平成元年)

(2) 非行時の身上
 III-78表は,本件非行名と入所時の身上(継続している保護処分等の有無)との関係を見たものである。入所時に保護処分等が継続していた者は36.5%を占めており,その大部分が保護観察である。また,本件非行名との関係で見ると,保護処分等が継続していた者の比率は,詐欺,毒物及び劇物取締法違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反,覚せい剤取締法違反,窃盗及び恐喝を犯した者において高い。
(3) 非行種類と入所回数
 III-79表は,非行種類と少年鑑別所入所回数との関係を見たものである。少年鑑別所に初めて入所した者が,69.2%を占めている。非行種類と入所回数との関係を見ると,再入者(2回以上の者)の割合が多いのは,薬物関係事犯と財産犯であり,再入者の割合が少ないのは性犯罪である。
(4) 知能及び精神状況
平成元年に全国の少年鑑別所に入所した者のうち,知能検査を実施した者(1万7,682人)の内訳を見ると,知能指数59以下は1.5%,60〜69は5.2%,70〜79は17.8%,80〜89は25.5%,90〜99は28.3%,100〜109は14.2%,110〜119は5.4%,120以上は2.1%となっている。
 また,精神診断の結果,精神障害の認められた者は総数1万7,699人のうち353人(2.0%)であり,その内訳は,精神薄弱194人,神経症10人,精神病質5人,その他の精神障害144人となっている。