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 平成 2年版 犯罪白書 第2編/第3章/第3節/10 

10 女子受刑者の処遇

 女子新受刑者は,昭和30年以降減少を続け,49年には,最低の467人となったが,50年からは増加に転じ,60年には最高の1,363人を数えるに至った。しかし,61年から漸減傾向を示し,平成元年には,前年に比べて154人(12.9%)減の1,039人となり,4年連続して減少している。元年の女子新受刑者の中では,覚せい剤取締法違反を犯した者が最も多く(前掲II-26表参照),全体の50.7%を占めており,同罪を犯した女子新受刑者は,昭和56年以降,連続して過半数を超えている状況にある。
 女子受刑者を収容する施設として,従来の栃木,和歌山,笠松,麓の各刑務所及び札幌刑務支所の5か所に加え,平成元年10月2日から岩国刑務所が加わり,6か所となった。女子受刑者は,その収容施設数が少ないこともあって,男子刑務所のように施設ごとにA級,B級等の収容分類級で分類して収容することはできないが,施設内における工場,居室の指定等に当たっては,収容分類が考慮されている。なお,女子外国人受刑者(WF級)は,すべて栃木刑務所に収容されている。
 女子施設における処遇は,情緒の安定性を養うこと,一般社会生活に関する知識を習得させること,保護引受人との関係の維持に努めることなどが,重点事項として行われている。また,開放的な雰囲気で,収容に伴う心理的な庄迫感をできる限り少はくするよう,所内の調度品などについても配慮がなされている。
 女子受刑者に対する職業訓練の種目は,美容科,縫製科などがある。さらに,覚せい剤事犯で入所する者の増加に対応して,薬害防止のための教育も活発に行われている。
 女子受刑者の医療及び母子衛生には,特別の配慮が払われている。特に,受刑者が妊産婦である場合は,特別の保護的措置がとられていて,出産は外部の病院で行われている。さらに,受刑者が1歳未満の実子を伴う場合には,その乳児を刑務所内の保育室で1歳になるまで育てることも許されている。1歳を超えた乳児は,一般の乳児施設又は保護者のもとに預けられる。